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2019年6月26日

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イギリスの与党・保守党党首選に立候補しているジェレミー・ハント外相は、信頼できる人物が次期首相にならなければ、イギリスは総選挙と、欧州連合(EU)からの合意なし離脱という事態になる危険があると話した。

BBCの独占インタビューでハント氏は、新たなブレグジット(イギリスのEU離脱)協定を交渉する能力は「首相の人柄次第だ」と語り、「自分なら確実に協定を実現できると思う」と述べた。

その上で、「より良い協定の見通し」が立たない場合には、合意なしブレグジットも辞さないとの考えを示した。

保守党は現在、全国16万人の党員による党首選投票を行っており、ハント氏とボリス・ジョンソン前外相が立候補している。次期党首は自動的にイギリスの首相となり、7月24日に就任予定。

「どうやってではなく、誰が」

イギリスは3月29日にEUを離脱する予定だったが、議会が離脱協定を3度にわたり否決したため、EUは離脱期限を10月31日まで延長した。

ローラ・クンスバーグBBC政治編集長による単独インタビューでハント氏は、自分とジョンソン氏は共に、テリーザ・メイ首相がEUと取りまとめた離脱協定を変更したいと思っており、新協定に2人が求める内容は似通っていると話した。

一方で、「ブリュッセルに行き、協定をまとめて持ち帰るはずだと、首相として信頼できるのは誰かということだ」と強調した。

「全く信頼できない人を選べば、交渉も協定もなく、さらには総選挙になる可能性が大きい。ブレグジットもなくなるかもしれない」

ハント氏はEUとは「より良い協定」を結べるとした上で、自分ならそれを実現すると話した。

「どのように(EU離脱を実現するか)という議論はたくさんしてきたが、今はもっと、誰がそれをするのかという議論が必要だ」

ただ、ジョンソン氏は信頼に値しないという意味かという質問には、ハント氏は同僚について自分はそのような発言は「絶対に」しないと話した。

「私が言いたいのは、私は信頼に値する人物で、協定を実現すると信用してもらっていいと、そう思っているということだ」

また、ジョンソン氏が首相になった場合には「全力」で彼に尽くすと述べ、逆の場合にはジョンソン氏も「同じようにしてもらいたい」と語った。

ジョンソン氏は24日にBBCが行った単独インタビューで、自分の人柄に疑問を持つ人たちは「でたらめなことを言っている」と一蹴している。

25日に予定されていたスカイニュースでの公開討論は、ジョンソン氏が参加を取りやめたため中止となった。代わりにハント氏は24日夜、ツイッターでユーザーとの質疑応答を行った。

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「偽の期限」

ジョンソン氏はまた、10月31日には「協定のあるなしに関わらず」EUを離脱するとしており、ハント氏にも同じようにするよう求めている。

しかしハント氏は、この日付を「偽の期限」と呼び、強硬なEU離脱は「私たちを総選挙の道へと進ませ、(最大野党・労働党党首の)ジェレミー・コービンに鍵を渡すことになり、EU離脱そのものがなくなるだろう」と説明した。

その上で、合意なしブレグジットも考慮には入れているものの、「より良い協定の見通し」があるうちは合意なしを推し進めることはないとしている。

また、「メイ首相がやろうとしていたのは、バックストップを含んだ離脱協定だ」と述べ、EU離脱協定で議論の中心となった、アイルランドと英・北アイルランドの国境管理をめぐる条項を批判した。

「当時、内閣にいた私はメイ氏を忠実に支援したが、これが正しいアプローチだと思ったことはない」

「私が考えているのはバックストップを含めない協定で、これまでとは違うものになるだろう」

バックストップ条項なしでアイルランドとの国境問題をどう解決するかという質問に、ハント氏は「技術主導の解決策」を模索すると述べた。

ハント氏は、イギリス政府は「すぐに、10月31日よりずっと前に」新たな協定を交渉できるか分かるだろうと話し、その結果を元に合意なしブレグジットを模索するかどうかを決断したいと話した。

EUは離脱協定の再交渉はしないとの考えを繰り返し示している。また、アイルランド国境についても、政治的な問題を技術で克服できるとの考えを否定している。

社会福祉と人工中絶

ハント氏はインタビューの中で、社会福祉政策も明らかにし、「正しいことをしている人」が報われるような資金の自動積み立て制度を作りたいと述べた。

また、自治体には社会福祉のための予算がもっと必要だと指摘。国民は年を取ったときに「きちんと面倒を見てもらえる」かどうか知りたいのだと話した。

ハント氏は、「なので、一定の公的資金が必要だ。でもこれは個人の責任の話でもある」と説明した。

「イギリスは、国民が年金を積み立てるのと同じような形で、人生の最後の数カ月、あるいは数年間という最も体調が悪くて苦しい時間のための社会福祉費用を貯蓄する、そういう国になるべきだ」

「こうしたサービスは、自動的に始まるが止めることもできる、そういうものになると思う」

また、人工妊娠中絶が受けられる期間を妊娠24週から12週に縮小するべきだという自身の主張についても説明した。

ハント氏は、中絶については「あらゆる立場」から「とても強い主張」が出ているとした上で、自分は保健相時代に「法改正を模索しなかった」し、「首相になっても同じだろう」と話した。

もし議会で中絶の期限をめぐる法案を採決することになったらどうするかという質問には、「それは良心の問題だろう」と述べた。

30年来の夢

首相を目指していることについて、ハント氏は「この瞬間を30年間待っていた」と語った。

「閣議のテーブルを囲みながらずっと、どのようにこの国を変えたいか考えていた。今がその時だと思う。ブレグジットはイギリス史上でも特別な瞬間で、イギリスの可能性を解き放てるかもしれない」

一方で、30年前に首相を目指すきっかけになったものは何かと問われると、「言わないでおく。それをいえば、大勢が呆れるだろうから」と言葉を濁した。

「でも私は首相の仕事をしたいし、成果を出せると思う。正しい人物を(首相としてブリュッセルに)送れば、ブレグジットを解決できるだけでなく、わが国の歴史に全く新しい、ワクワクするような幕が開けるかもしれない。それが私のやりたいことだ」


<分析>ローラ・クンスバーグ政治編集長

ジェレミー・ハント外相はこの党首選では劣勢だが、形勢逆転のチャンスをどこで見いだすのか? 答えは、人柄について話すことだった。

多くの保守党員が、下院議員が、そして国民が、ボリス・ジョンソン前外相が首相官邸に入るに足る人物なのか疑っていることを、ハント氏はよく知っている。

どんなにジョンソン氏を信頼できないとは言っていないと言っても、どんなに一生懸命それを否定しても、ハント氏が自分こそは信頼に値し、信頼できる人物を首相に選べば離脱協定の再交渉ができると繰り返していることが、全てを物語っている。

ジョンソン氏の首相としての適性や気質、人柄について大勢が抱く疑念を、ハント氏は明らかにこの党首選で繰り返し突こうとしている。

2人の政治家としての資質はかなり違う。片方はショーマンで、もう片方は自分こそ堅実な人間だと打ち出そうとしている。

だが、政治家としての資質の違いの裏で、EUについて2人が約束する内容には大差ない。このことを理解しておくのは大事だ。

ブレグジット騒ぎからイギリスを脱出させるための両者の提案はどちらも、「協定の再交渉」に基づいている。これは、EUが繰り返し却下してきたことだ。


(英語記事 Hunt: Next PM must be trustworthy

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48767548

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