国際

2019年7月2日

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川瀬剛志 (かわせ・つよし)

上智大学法学部教授

上智大学法学部教授。専門は国際経済法。慶應義塾大学法学部卒業、ジョージタウン大学法科大学院修士。経済産業研究所ファカルティ・フェローも務める。著書に『WTO紛争解決手続における履行制度』『地球温暖化対策と国際貿易-排出量取引と国境調整措置をめぐる経済学・法学的分析-』(ともに共編著)。

 我が国が議長国として初めて迎える一連のG20会合が、6月28日・29日の大阪サミットで幕を閉じた。トランプ政権の発足以来、動揺する国際通商システムの立て直しが急務であるところ、今回の首脳会合でもWTO改革が一つの焦点となった。大阪首脳会合の機会を捉えて米中首脳会談が開催され、両国の出方次第ではWTO体制への一層のダメージが懸念される緊張感の中、閣僚声明は「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境」、「市場を開放的に保つよう努力」すること、そして「公平な競争条件」を謳い(パラ8)、成功裏に取りまとめられた。安倍首相は議長会見でこれら3点に言及し、こうした原則の確認こそが重要であることを強調した。

日本が議長国として初めて迎えたG20大阪サミット(代表撮影/ロイター/アフロ)

 首脳声明で何らかの意味でWTOに関連する課題に触れたのはわずか2パラグラフ(パラ8、11)にすぎない。しかし、既に詳細な貿易・デジタル閣僚声明が取りまとめられているので、首脳声明は全面的にこれを「歓迎」することでWTO体制を中心とした自由貿易への支持を明確にしている(パラ8)。その貿易・デジタル閣僚声明では、直近のブエノスアイレスの貿易大臣会合声明に比してWTO改革の具体的課題への言及が格段に増えており、G20各国のWTO重視の姿勢がより鮮明になった。たしかに「反保護主義」、「WTO協定整合的な貿易措置」、「多角主義(マルチラテラリズム)の重視」といった米国にとっての『NGワード』は盛り込まれなかった。しかしそれでも首脳声明は「WTO 協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する」(パラ8)として、WTOを主に、そして地域主義を従に置いており、依然としてWTOが国際通商体制の中心であることを首脳レベルで確認できたことは、昨今のWTO危機の文脈では重要だ。

 これらの意味において、全体としては、WTOを中心とした自由貿易体制の重要性と改革に首脳レベルで前向きなメッセージを出すことができた点は、高く評価したい。

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