世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年7月11日

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 6月26日―27日、G20大阪サミットの前夜、東京では、フランスのマクロン大統領夫妻を公式実務訪問賓客として迎えた。天皇皇后両陛下と会見され、宮中午餐会も開かれた。2017年に既存の政党から離れて若き新星として大統領に当選したマクロン大統領だが、大統領に就任してから日本を訪問するのは初めてだった。昨年9月には、今上陛下が、皇太子時代最後の海外訪問先としてフランスに行かれマクロン大統領と会見されているし、安倍総理は、2018年10月及び2019年4月に訪仏している。

(isaxar/roman_slavik/ookawaphoto/iStock)

 このように、近年ますます緊密化している日仏関係であるが、今回は、日仏首脳会談を行い、重要な合意文書が発出された。

 それは、「『特別なパートナーシップ』の下で両国間に新たな地平を開く日仏協力のロードマップ(2019~2023年)」と呼ばれるものである。これは、今後5年間の日仏関係の指針をまとめたもので、全7頁、35項目ある。大きな柱は5つある。1つは、「インド太平洋における協力を強化する」ことである。両国は、「自由で開かれた平和と繁栄の地域とするために、航行の自由・海洋安全保障、気候変動・環境・生物多様性、質の高いインフラの3本柱を中心に、インド太平洋のパートナーシップの枠組みで、具体的な協力を実施していくことにコミットする」と記された。2つ目の柱は、「安全保障及び防衛分野における二国間の協力を深化する」ことである。自衛隊とフランス軍との共同訓練はもとより、情報やサイバー・セキュリティ、テロ対策、装備品開発協力等、包括的協力が謳われている。3つ目は、「主要な世界規模課題に共に立ち向かうため、多国間主義に基づくグローバルガバナンスを推進する」というものである。マクロン大統領は、就任以来、EUをはじめ多国間主義を強調し、積極的に推進している。ここでは、国連や世界貿易機関(WTO)の改革、北朝鮮やイラン問題、気候変動問題やプラスチックごみ問題、さらには、女性のエンパワーメント会議での協力、核不拡散条約(NPT)検討会議での連携、国連海洋法条約の遵守等が記載された。4つ目の柱は、「イノベーションのための両国間の多様な経済的パートナーシップを発展する」ことである。安倍総理は第二次安倍内閣の当初からイノベーションの重要性を説いてきた。また、マクロン大統領は、オランド政権下で産業・経済・デジタル大臣として日本を訪問したことがある。日本とEU間では、日EU経済連携協定(EPA)も発効しているが、日仏両国は、さらに、今後の世界経済を大きく左右すると考えられるIoTやAI、デジタル分野での協力、エネルギーや農業分野での協力等でも合意した。最後5番目の柱が、「文化、教育、大学、科学、技術、スポーツ及び観光における絆の強化に基づいた人的交流における新たなダイナミズムを創造する」ことである。2018年は、日仏国交160周年の節目の年で、フランスでは「ジャポニズム2018」が大きな成功をおさめた。2021年には、「日本におけるフランス文化季間」が行われる。また、2019年9月、ラグビーのワールド・カップが日本で開催されるが、その次の2023年はフランス開催となり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後、2024年はパリ大会となる。このような世界的競技大会を通しても日仏交流を拡大する機会となる。科学技術分野では、ロボットや人工知能、医療、宇宙分野での協力を推進することにもなった。将来を見据え、高校生や大学生等の青少年交流も活発化させる。

 このような5年後まで見据えた2国間のロード・マップを作成できる国家関係は、なかなかないだろう。美食や匠の文化を有し、長い交流の歴史があり、地方の多様性豊かな国同士で、日仏両国は数々の価値を共有する。今後の日仏関係の強化は期待できよう。 

  
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