BBC News

2019年7月3日

»著者プロフィール

大規模なデモが続く香港で1日夜、立法会(議会)の庁舎に突入し破壊行為に及んだデモ隊について、中国は、「法の支配を踏みにじる」「重大な違法行為」であり、「一国二制度」へのあからさまな挑戦だと非難した。香港では、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案をめぐり、廃案を求める抗議行動が続いている。

中国返還22周年を迎えた1日、平和的に始まった抗議デモは、一部の抗議者が立法会を数時間にわたって占拠するなど、暴力行為が激化した。警察官数百人が、抗議者を排除するために催涙ガスや警棒などで応戦した。

中国政府は香港政府に対し、この抗議デモの「暴力的な犯罪者の刑事責任」を捜査するよう求めた。

香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だった。

イギリスと中国は1984年に、「一国二制度」の下に香港が1997年に中国に返還されることで合意した。香港は中国の一部になるものの、返還から50年は「外交と国防問題以外では高い自治性を維持する」ことになった。

香港市民には、表現の自由など、中国本土ではみられないような権利が保障されている。

「逃亡犯条例」の改正案が通った場合、中国政府による香港統治が迫り、その高度な自治性が維持されなくなるのではないかという懸念が浮上。数週間にわたって大規模な抗議活動が繰り広げられる最中、立法会に突入する事態となった。

<関連記事>

「一国二制度」へのあからさまな挑戦

中国政府は、立法会での破壊行為は、「一国二制度」へのあからさまな挑戦だとしている。

これまでのところ、中国は抗議者から距離を置いて対応してきた。しかし、1日の暴動が、中国がより厳格な香港統治を推し進めるきっかけになるかもしれないと、BBCワールド・サービスのアジア太平洋担当編集長、セリア・ハットン氏は指摘する。

香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官もまた、中国政府と同様の発言をしていた。2日午前4時ごろ、警察本部前で、李家超(ジョン・リー・カチュウ)保安相など複数高官と共に記者会見を開いた林鄭氏は、立法会庁舎内に突入した抗議者による「過激な暴力の行使と破壊行為」を非難した。

香港警察の盧偉聰(ステファン・ロー)本部長が立ち会う中、林鄭氏は、「香港では法の支配以上に重要なものは何もない」と述べた。

林鄭氏は先月15日、立法会での改正案の審議中断を発表した。しかし、改正案の完全な撤回を求める抗議者からは、林鄭氏の退陣を求める声が上がるなど、抗議活動は収まっていない。

1日に何があったのか

香港の民主化を求める運動は毎年、イギリスから中国に返還された7月1日に行なわれている。

しかし今年は、「逃亡犯条例」改正案への反発の拡大を受け、例年以上に大規模なものになるとみられていた。

デモ隊は1日午前4時ごろから、金属やプラスチックの柵を使って、返還22周年を祝う式典の会場である香港コンヴェンション・アンド・エキシビション・センター(HKCEC)近くの複数の道路の封鎖を始めた。

正午ごろになると、デモ隊の一部が立法会前へと移動。数百人が遠くから見守る中、庁舎を包囲した。金属製の台車で突っ込むなどしてガラス扉を破壊し、同日夜、数百人が庁舎内に突入した。

議場内では、香港特別行政区の区章に落書きし、英国植民地時代の香港の旗を掲げ、壁にスプレー缶でスローガンを書き、備品を壊すなどして抗議を続けた。

2日未明になると、機動隊がヘルメットをかぶり雨傘を手にした抗議者たちの強制排除に乗り出した。一部の強硬派は立てこもろうとしたが、他の抗議者が強制的に退去させた。

それから1時間以内に、庁舎周辺からはメディアと警察を除く全員が撤退した。警察はその後、庁舎内に残っている人がいないか、部屋をひとつひとつ調べた。

林鄭氏の主張

林鄭氏は、立法会への突入は「多くの人を非常に悲しませ、多くの人に衝撃を与えた」と述べた。

毎年7月1日に行なわれる平和的な行進は、「平和と秩序に結びつく中心的価値」を反映するものだとしている。

会見では、報道陣からの質問が相次いだが、林鄭氏は落ち着いて対応。香港における法の支配を維持することの重要性を強調した。

「我々がこのような暴力行為を非難することは正当だと、社会全体が同意することを願うし、早急に日常が取り戻せることを願っている」

デモ隊の要求に対応できなかったことを非難されるのではないかとの指摘については、林鄭氏はきっぱりと否定。香港政府は、「正当な理由に基づき、すべての要求には応じなかった」と述べた。

林鄭氏は、改正案は、現政権の任期満了と共に期限切れになるとした上で、「これは、我々が耳にした要求への非常に前向きな対応だ」と述べた。

一方、抗議者全員に恩赦を与えることについては、「法の支配に沿って」いないと主張。デモ隊による「いかなる違法行為も追及する」だろうと述べた。

なぜ抗議するのか

先月12日にも「逃亡犯条例」改正案をめぐり、反対派の市民ら数千人が立法会周辺で抗議デモを繰り広げた。

しかし、デモ隊の要求は今や改正案廃案に留まらず、6月12日に立法会周辺で繰り広げた抗議行動に対する「暴動」という言葉の使用取消や、拘束中の活動家全員の釈放、および警察による暴力に関する調査も求めている。

抗議者の間には、「逃亡犯条例」の改正案が通った場合、中国政府による香港統治が迫り、自治性が維持できなくなるのではとの懸念がある。

多くの抗議者は、すべての要求が受け入れられるまでは引き下がらないとしている。

各国の反応

香港での混乱に対する、各国の反応は以下の通り。

  • 1日のデモが暴力的になる前、アメリカのドナルド・トランプ大統領は抗議者への支持を表明。抗議者は「民主化を求めている」、「残念なことに、一部の政権は民主主義を欲していない」と述べた。
  • イギリスのジェレミー・ハント外相は、同国は「すべての側の暴力行為」を非難するとした上で、香港当局に対し、「起きたことの根本的な原因、つまり、自分たちの基本的自由が攻撃されているという、香港市民の根深い懸念を理解する」よう求めた。
  • 台湾外交部の呉釗燮(ジョセフ・ウー)部長(外相に相当)は、香港市民は「憤り不満を抱えている」、「一国二制度」は「でまかせ以外の何ものでもない」と述べた。

(英語記事 Hong Kong protests trample rule of law - China

提供元:https://www.bbc.com/japanese/48849810

関連記事

新着記事

»もっと見る