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2019年7月25日

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露口洋介 (つゆぐち・ようすけ)

帝京大学経済学部教授

帝京大学経済学部教授。専門は中国経済、金融論。1980年東京大学法学部を卒業し、日本銀行入行。在中国大使館経済部書記官、日本銀行香港事務所次長、日本銀行初代北京事務所長を歴任し、2011年に日本銀行を退職。信金中央金庫、日本大学経済学部教授を経て2018年4月より現職。著書に『中国経済のマクロ分析』(共著)、『中国対外経済政策のリアリティー』(共著)、『アジア太平洋の未来図』(共著)、『中国の金融経済を学ぶ 加速するモバイル決済と国際化する人民元』(共著)など。

 6月25日、日本取引所と上海証券取引所の間で締約された「日中ETFコネクティビリティ」に基づくETF(上場投資信託)が東京証券取引所と上海証券取引所に相互上場され、記念セレモニーが開催された。東京証券取引所では中国の株価指数であるSSE180やCSI500に連動するETFが上場され、上海証券取引所では東証株価指数や日経平均株価に連動するETFが上場された。中国では、海外との間の資本取引のための資金の移動が制限されているが、今回の制度では適格海外機関投資家(QFII)制度や人民元建て適格海外機関投資家(RQFII)制度、あるいは適格国内機関投資家(QDII)制度と呼ばれる投資枠を日中の機関投資家に新たに割り当てて相互の投資を可能にしている。これによって、日本の投資家にとっては収益性が期待しうる中国株のETFへの投資機会が拡大し、中国の投資家にとっては安全性の高い安定した日本株のETFへの投資が可能になる。相互補完的で、双方に利益のある制度といえる。

(alfexe/gettyimages)

 ETFの相互上場は、2018年10月に北京で実施された安倍総理と李克強総理の首脳会談において、検討することが合意されたものである。

 また、それ以前の2018年5月に東京において実施された両首脳の会談では、日本に対して2000億元のRQFII枠の付与が決定され、さらに、日本に人民元クリアリング銀行を設置すること、円-人民元通貨スワップ協定の締結、中国における日系金融機関に対する債券業務ライセンスの付与及び中国市場への参入の早期進展などが合意された。

 このうち人民元クリアリング銀行については、日本における人民元決済を効率的で便利なものにするものであり、2018年10月に中国銀行東京支店が、また2019年6月27日には三菱UFJ銀行が指定された。円―人民元通貨スワップ協定については、中国における円の利用、日本における人民元の利用の安全性を高めるものであり、2018年10月26日に日本銀行と中国人民銀行との間で3.4兆円(2000億元)の取極めが締結された。

日中金融協力はこれまで多くの成果を上げてきた

 このような、日中政府間の日中金融協力は、さらに2011年12月の日中首脳間の合意に遡ることができる。当時の野田佳彦総理と温家宝総理の間で「日中両国の金融市場の発展に向けた相互協力の強化」について合意した(日中金融協力合意)。この合意の中では、日中間の貿易などの取引の決済にできるだけ両国の通貨である円や人民元を使うようにすること、銀行間の為替市場で円と人民元の交換取引を行う際にドルを間に挟まずに円と人民元の直接取引を行うこと、東京市場での日系企業による人民元建て債券の発行などが含まれていた。当時、筆者は、財務省に対して銀行間市場における円―人民元直接交換取引の実現を強く進言し、金融協力の合意後には財務省の日中金融協力アドバイザーとして、日中政府間の交渉にも参加した。2012年6月1日には、日本と中国それぞれの銀行間為替市場で円―人民元直接交換取引が開始された。

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