2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年7月29日

景気対策とは別に消費税率を段階的に引き下げるという選択肢

 上記のように、景気対策として消費税率を引き下げる事には様々な問題がありますが、景気対策とは無関係に、そもそも消費税を撤廃して他の税に振り替えるというのであれば、それは一つの選択肢でしょう。

 もちろん、一気にやると買い控えと反動買いが大きくなりすぎますから、消費税率を段階的に引き下げて、最終的にはゼロにする、といった配慮は必要でしょうが。

 財務省によれば 、消費税のメリットは「現役世代に負担が集中せず、高齢者を含めて広く負担する」「税収が景気に左右されにくく安定している」との事ですが、これはいずれも疑問です。

 消費税率が上がると消費者物価が上がります。そうなると、原則として高齢者に支払われる年金も物価スライドで増額されます。つまり、高齢者は消費税増税による負担増が現役世代より軽いのです。

 税収が景気に左右されにくい、というのもメリットであるようで、デメリットでもあります。「景気が悪い時には税収が減って景気を下支えし、景気が良い時には税収が増えて景気の過熱を防ぐ機能」が欠けている、ということだからです。

 そもそも「法人税率が下がっているのに消費税率が上がっているのはケシカラン」といった意見は、当然あるでしょう。「痛税感の強い消費税を減税して、痛税感の弱い相続税を増税すれば、景気にも良いし貧富の差の是正にもなる」という考え方もあるでしょう。消費税が本当に望ましい税なのか、再考の余地ありです。

 筆者は、消費税の減税と相続税の増税を提唱しています。特に、配偶者も子も親もいない被相続人の財産は、兄弟姉妹が相続するわけですから、その際の相続税率は極端を言えば100%でも構わないと思います。

 これは、公平の観点からも、痛税感の観点からも望ましいことに加え、実利的でもあります。最近は、結婚しない人、結婚しても子供のいない夫婦が増えているので、数十年待てば巨額の税収が見込めるでしょう。ぜひ検討してほしいものです。

  
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