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2019年8月2日

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トランプ米政権の米国家経済会議議長だったギャリー・コーン氏(59)は、米中貿易戦争でトランプ政権が対中関税を重ねているのは、中国よりもアメリカに打撃を与えているとBBCに話した。

コーン氏はBBCラジオに出演し、米中の追加関税合戦はアメリカの製造業と資本投資に「劇的な影響」を与えていると述べた。

さらに中国にとって、アメリカとの貿易戦争はただでさえ過熱気味だった景気を落ちつかせるための「非常に好都合の言い訳」になったという見解を示した。

米投資銀行ゴールドマン・サックスの元社長で自由貿易主義者のコーン氏は、政権発足時から入閣。共和党政権において数少ない民主党支持者だったが、経済ナショナリズムを重視するトランプ氏と異なり、コーン氏は国際主義を重視。政権の鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税導入に反対して、昨年3月に国家経済会議議長の職を退いた

コーン氏はBBCラジオ番組「トゥデイ」で、「中国経済は与信と借入能力によって動かされていると思う」と話した。「どちらも中央政府が決定するし、政府は自在に信用を保証したり取り上げたりできる」。

「全員が損する」

トランプ氏は「もうずっと以前から」、米中の貿易不均衡は関税で解消できるという考えだったが、「貿易戦争があってもなくても、中国経済は失速したはずだと思う」とコーン氏は言う。

ただし、中国によるアメリカの知的財産権侵害と、アメリカ企業への中国市場アクセスの制限について、トランプ氏が取り組んだのは正しい対応だと評価した。

「どちらも正す必要がある」

ただし、「貿易戦争では全員が損する」とコーン氏は警告した。「アメリカ経済の8割はサービス産業で成り立っている。サービス分野は好調だ。なぜかと言えば、関税をかけられていないので」。

対中関税のせいで、不可欠な重要製品を中国から輸入するのが割高になり、景気刺激策として導入された減税策の効果が帳消しにされてしまっているという。

「工場設備を造るには、鉄鋼を買い、アルミを買い、輸入製品を買う必要がある。そこに関税をかけてしまうと、せっかく片手で与えた減税のメリットを、文字通りもう片手で取り上げているに等しい」

「製造業の雇用が伸びないのはそのせいだ。この関税騒ぎを抜け出せれば、アメリカの製造業で雇用が増えるチャンスは確実にある」

「相当の影響」

コーン氏とは別のBBCインタビューで、米フォード自動車幹部のジョーセフ・ヒンリックス氏は、トランプ政権の関税による事業への影響は昨年に比べると「減退」したと話した。

「昨年は、鉄鋼とアルミ関税の影響で自分たちの事業に相当の影響が出た」

「我々が中国から輸入するより車両を中国に輸出する方が多いので、アメリカの関税への報復として中国が実施した関税の方が、昨年は打撃が大きかった。しかし昨年後半に40%だったのが、今では15%に戻った」

「もちろん、アメリカに入ってくる部品と自動車への関税は高くなっている」

「その影響はまだある程度続いているので、全体としては追加関税分をまだ払っているけれども、昨年ほどはひどくない」


<解説> ジョン・ソープル、BBC北米編集長

大統領の政策をコーン氏が評価しているとは言いがたい。

貿易戦争は国際経済にとって地政学的な不安要因となり、そのせいで企業の投資が冷え込んでいると、コーン氏は見ている。なによりも、中国との貿易戦争は勇ましい舌戦とは裏腹に、中国よりもアメリカにとって打撃となっているというのだ。

この意見にトランプ氏は気を害するだろう。しかしコーン氏はかつて政権の経済政策トップとして、減税や規制緩和を実現してみせた。おかげで米経済は、記録的に低い失業率、給与上昇、消費者信頼感拡大という起爆剤を獲得した。

確かに、トランプ政権の減税策でもっぱら恩恵をこうむっているのは、富裕層に偏っている。経済界は巨額減税のメリットを受けた。しかし、経済が成長を続け、金利が下がり続ける中にあって、それはさほど大きい問題ではなさそうだ。


(英語記事 Trump's former top adviser: Tariffs backfiring on US

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-49202126

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