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2019年8月6日

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アメリカで24時間以内に2件の乱射事件が相次ぎ、ドナルド・トランプ米大統領の言動が移民や有色人種への憎悪(ヘイト)を増幅させていると批判されるなか、トランプ氏は5日、白人至上主義を否定する演説をした。その一方でバラク・オバマ前大統領は同日、「憎悪を増幅させる指導者の言葉を拒否すべき」と、大統領経験者として異例の発言をした。

オバマ氏は5日、「私たちは、指導者の口から出てくる恐怖や憎悪を増幅させたり、人種差別的な考えを普通のことのように正常化したりする言葉を、きっぱり拒絶すべきだ。自分たちと見た目の違う人を悪者扱いする指導者、あるいは移民を含めた他人が私たちの暮らしを脅かすと示唆するような指導者、あるいは他の人間を人間以下呼ばわりするような指導者、さらにはアメリカがたった一種類の人間のものだと示唆するような指導者を」と、異例のコメントを発表した。

「このような物言いは新しくない。歴史を通じてほとんどの人間の悲劇の根本には、こういう発言があった。ここアメリカでも、世界中でも。奴隷制度の根本で、(南北戦争以降、1964年まで米南部にあった人種差別的法律の総称)ジム・クロー、ホロコースト、ルワンダの大虐殺、バルカンの民族浄化の根っこにもこうした物言いがあった。私たちの政治や公的生活に、まったくあってはならない。そして今こそ、善良な圧倒多数のアメリカ人、あらゆる人種と信仰のアメリカ人が支持政党を問わず、このような物言いはあってはならないと、はっきりきっぱりと言うべきだ」と、オバマ氏は書いた。

オバマ氏は誰も名指しにしていないが、この声明の前にはトランプ氏がホワイトハウスで、白人至上主義を否定する演説をし、自分がこれまで不法移民や有色人種に対して繰り返してきた言動が国内の憎悪や暴力をあおっているという批判をかわそうとした。

トランプ氏は、4年前の5月に大統領選出馬を表明するとともに、メキシコからの移民を「強姦犯」や「殺人者」と呼んだ。不法移民の入国を「侵略」と繰り返し、自分に批判的な有色人種の女性野党議員たちに「もといた国へ帰ったらどうだ」などと攻撃的発言を重ねた。

一方のオバマ氏は在職中、銃規制を強化しようとしながら、実現できずに終わった。

2015年にはBBCとの単独インタビューで、「常識的な銃規制法」を成立させられなかったのが、大統領として何より不満だと述べた。

今回の声明でオバマ氏は乱射事件について、「アメリカほど頻繁に大量乱射事件を経験する国は、地球上にほかにない。この国ほどの銃暴力を容認する先進国はほかにない」と批判した。

さらに、「こういうことが起きるたびに、銃規制法を強化してもすべての殺人を止めるわけじゃない、すべての狂った人間が武器を手にして公の場で無実の人を撃つのを制止するわけじゃないと言われる。しかし証拠が示している。規制を強化すればいくらかの殺人は止められると。いくらかの家族を、心痛から救うことはできると。私たちは無力ではない。全員が立ち上がり、銃法制を変えるよう公職者の責任を問いたださない限り、こうした悲劇はいつまでも続く」と書いた。

その上でオバマ氏は、テキサス州エルパソでの乱射事件は「危険な傾向に従っているようだ」と書き、問題を抱えた人物が人種差別思想を自分のものとして受け止め、白人の優位性を守るには自分が行動しなくてはと暴力沙汰に及ぶ現象が続いているのではないかと指摘した。

トランプ氏は乱射事件について、精神疾患こそが問題だと繰り返している。

これに対してオバマ氏は声明で、「ISIS(イスラム国の意味)や他の外国テロ組織の信奉者と同様、こうした個人は単独で行動しているかもしれないが、インターネットに大量にはびこる白人至上主義ウェブサイトによって過激化した人たちだ」と、問題を抱える人たちが差別的過激思想に影響され、暴力事件を起こしているという見方を示した。

トランプ大統領は何を言った?

ホワイトハウスでの演説でトランプ氏は、「引き金を引くのは銃そのものではなく、精神疾患と憎悪だ」と述べ、精神疾患を持つ人への銃規制や、大量殺人を行った犯罪者への死刑の適用、銃規制をめぐる党派を超えた協力などを求めた。

また、「アメリカは声をひとつにして、人種差別や偏見、白人至上主義を非難するべきだ。こうした悪のイデオロギーを打ち負かすべきだ。アメリカに憎悪の居場所はない」と話した。

一方で、米連邦議会に提出されている銃規制法案への支持は表明しなかった。

トランプ大統領は演説でさまざまな政策を説明。政府機関とソーシャルメディア企業の連携や、精神疾患関連法の改正、アメリカ文化に存在する「暴力礼賛」を終わらせることなどを挙げた。

また、本人や第三者を傷つける可能性のある銃保持者から法機関が銃を取り上げられる「レッドフラグ法」の導入を訴えた。

トランプ氏は、政府機関は一丸となってこうした暴力行為を行いそうな人物を特定し、銃火器を入手できないようにすべきだと語り、銃撃を行う可能性のある人物を監禁する可能性も示唆した。

さらに、司法省には憎悪犯罪(ヘイトクライム)や大量殺人の犯人に死刑を適用するための法案を策定するよう指示したと明らかにした。

その上で、社会で暴力が奨励されていることについて、インターネットや「おぞましい」ビデオゲームのせいだと批判した。

「今日は、問題を抱えた若者がいとも簡単に暴力を称賛する文化に囲まれてしまう。今すぐにこれを阻止するか大幅に軽減するべきだ」

しかしトランプ氏は、自身の不法移民に対する強硬発言には言及しなかった。野党側は、トランプ氏の一連の発言が人種差別的な攻撃を増やしていると非難している。

また、演説の最後には、銃撃のあったオハイオ州デイトンをトリードと言い間違え、批判を浴びた。トランプ氏は7日にエルパソを訪問する予定だ。

(英語記事 Obama urges Americans to reject leaders who stoke hatred

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49246274

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