ヒットメーカーの舞台裏

2012年2月15日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

パナソニック サイクルテック
回生充電式電動アシスト自転車「ビビチャージ」

 自転車が進むための力をモーターで補助する電動アシスト自転車の進化版だ。下りの坂道など、アシストが不要な時にはモーターが発電機に切り替わって電気をバッテリーに蓄える。2012年1月に事業統合したパナソニックと三洋電機の自転車部門が一体となって開発し、11年12月に発売した。シリーズで月産3000台を計画しているが、それを上回るペースでの好調なスタートを切っている。

 前輪の車軸に装備したモーターで駆動をアシストする。通常のアシスト自転車は、ペダルの位置にモーターを設置し、チェーンを通じて後輪の駆動力を補助する方式となっている。車輪の回転で電気を起こして蓄えることを「回生充電」と呼ぶが、前輪が回転する力をチェーンを介さずにダイレクトに活用することで回生充電が効率よくできるようにした。前輪駆動方式の狙いはそこにある。

 ビビチャージの場合、回生充電は下り坂やブレーキをかけた時だけでなく、平地を走っている時でも走行モードの選択によっては、回生充電ができる。試乗し、平地を走っているとペダルが少し重くなって、回生充電が始まった。しかし、ペダルに力を込めると「早く走りたい」という意思が制御装置に伝わり、回生充電が解除されるだけでなく、瞬時にモーターによるアシストが加わってきた。

 ペダルを踏み込むと、エンジンとモーターの両方で加速するハイブリッド車(HV)のような感覚だった。実際、回生充電とアシストの切り替えなどの制御は、HV並みである。ビビチャージが幅広い回生充電にこだわったのは、家庭電源でフル充電した後の走行距離を延ばし、充電頻度を減らすためだ。走行しながら発電するので、電気代の節約ができる一方、充電の手間は減る。

 バッテリーは容量によって3タイプが選べるようになっており、今回、業界で最大容量となった16Ah(アンペアアワー)のモデルだと、フル充電から連続160キロの走行ができる。パナソニックの従来品との比較では約60キロ延長された。価格は最廉価グレードが12万9000円で、回生充電のない、従来品の売れ筋モデルより2万円ほど高い。

 アシスト自転車の国内需要はここ10年拡大を続けており、11年は前年を約1割上回る43万台程度となった。この市場でパナソニックは4割強のシェアで最大手、三洋は1割強を確保していたので、事業統合により過半を占める勢力となった。

かつての競合社に出向し
製品開発に燃えた技術陣

 ビビチャージの開発プロジェクトは、10年秋に発足した。当初は三洋の技術陣や商品企画担当者らが、パナソニックの自転車事業会社「パナソニック サイクルテック」に出張しながら開発を進めていた。10年春には、五十数人の三洋社員が同社への出向に切り替え、開発を加速させていった。この自転車の技術でカナメとなる制御システムの開発リーダーを務めた商品開発部モータ開発チーム参事の数原寿宏(49歳)も、三洋出身だ。

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