立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年8月12日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

香港デモの落とし所

 まず排除したいのは、最終的に北京や香港政府が態度を軟化させ、抗議者の要求をほぼ全面的に受け入れ、香港に自由を与えるというシナリオだ。そうなると、その文脈の延長線上で、米中貿易戦争で本質的に争われてきたアジェンダも連鎖的に問題解決し、米中貿易戦争は米国の全面勝利で終結する。ただこれは単なる理論上のシナリオに過ぎず、現実的な可能性は皆無に等しい。なので、冒頭にこれを排除しておきない。

 現実的なシナリオを言えば、香港の人々に大変申し訳ないが、香港はもうすでに終わっていると私は見ている。その「終わり方」は2通りの仮説を立てられる。1つは「強制終了」、もう1つは「自然終了」である。

 「強制終了」とは、中国側の強硬介入。軍・武装警察部隊の投入や戒厳令、非常事態宣言などによって市民抗議運動を鎮静化させるという結末である。法的根拠に関しては問題がなさそうで、また当局も徐々にその可能性を匂わせている。ただ、「強制終了」した場合、事実上「一国一制度」への移行を世界に宣言するようなもので、香港はその国際的地位を喪失することをも意味する。ゆえに、「最後の一線」を超えない限り、「強制終了」の選択肢は排除されていいと思う。

 上記でなければ、待っているのは「自然終了」だ。抗議活動は現状のまましばらく継続しつつも次第に力が弱まり、疲弊化が進み、最終的に終結する。今回の抗議活動は香港人が「最後の戦い」と位置付けているように、まさに最後となれば、香港はそのまま「自然終了」する。

 本来ならば、いくらなんでもデモなどは3カ月も半年も続けられるものではない。「自然終了」の可能性が高いのだが、たまたまというか、いまの時期が悪すぎる。中華人民共和国建国70周年という盛大な祝賀式典を10月1日に控える中、内憂外患の様相を世界に見せることは決して許されない。それまではあと1カ月半しかない。香港人が頑張れば、なんとか「ゲリラ戦」を続けられなくもない。最終的に10月1日の日にまたもや100万人や200万人、あるいはそれ以上規模の特大デモを断行すると、考えるだけでぞっとする。

 中国にとってみれば、何としてでも遅くとも9月前半までには騒動を終結させなければならない。焦燥感に駆られる故に、「強制終了」に踏み切るための「最後の一線」の設定条件が影響を受けるかどうか、懸念が高まる。

 「強制終了」であれ「自然終了」であれ、いずれもトランプ大統領にとって有利な展開になるだろう。香港は「終了」によってその国際的地位が本質的に変わる。特にトランプ政権はその際、香港と中国本土を同一体系として最恵国待遇どころか、香港にも中国本土並みの関税を徴収するだろう。

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