WEDGE REPORT

2012年2月22日

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宮脇磊介 (みやわき・らいすけ)

初代内閣広報官。1956年東京大学法学部卒業後、警察庁入庁。静岡県警本部長、皇宮警察本部長などを経て、86年に、新設された内閣官房内閣広報官に就任。中曽根、竹下両総理に仕える。現在、世界平和研究所研究顧問などを務める。

重大局面を迎える日本の対露外交

 日本の対露外交はいま、重大局面を迎えている。プーチンの再登板を睨みつつ、日本は、北方領土問題解決に向けて、ロシア国民への「情報発信」とロシア国内の「世論形成」に、知恵ある「戦略」と「行動」が求められている。つまり、領土問題解決には、「日本の努力」が必要不可欠なのである。

 これまで日本の対露外交は、「ロシア首脳の出方待ち」に終始してきた。だが、「機会の窓」は、日本が切り開いていくべきである。

 ロシア国民が知らない史実を知らしめるには、日本がやらずに誰がやるのか。事実、05年に日本人強制抑留問題の「日露シンポジウム」が開かれた際、ロシア側から「なぜ日本はロシアに対してはっきりと(謝罪・補償などの)要求を突きつけないのか」「ロシアではほとんど知られていないソ連による日本人のシベリア抑留史を、ロシア語でまとめ、ロシアの世論に働きかけるべきだ。日本側がなぜ躊躇するのか、理解に苦しむ」といった意見が出たという。

 こうした声を真摯に受け止め、日本政府は、しかるべき緻密な広報戦略を立てる必要がある。ロシアの政府機関・メディア・民間セクターに働きかけて、日本に対する友好的な気運を醸成する具体的手法を示して協力を求めなければならない。

 韓国との間の竹島問題についても同様のことが言える。なぜ竹島の領有権が問題化したのか。事の起こりを、相手側に知らせる、その前に日本国民が知っておく。それが、領土問題解決への基盤構築といえよう。

 日露間には、さまざまなチャネルも必要である。昨今では、首相、外相級でも行き当たりばったりの付き合いである。プーチンから「日本は対等に付き合える国だ」と評価されるようにしなければ、まともに相手にされない。少なくとも、「この人なら対等に付き合える人物である」と、プーチンはじめロシアの要人たちに信頼と尊敬の念を抱かせられる政治家が、日本に現れなければならない。「日本政府や日本国民は戦略的思考に優れている知恵のある国民だ。だから、日本に対していい加減なことはできない」と認識させるだけの「力」を示さねばならない。

 また、ホスト国としてウラジオストクでのAPEC開催を9月に控える今年はロシアにとって重要な年だ。日本の企業も、プーチン構想に沿って、東シベリア・極東開発への投資戦略について構想検討を急がねばならない。これには、企業間および事業展開する現場での人的交流と信頼関係の構築も必要である。だが、現状、ロシアでは、法律・制度の整備・運用が不安定であり、日本企業の投資や進出の大きな障害となっている。プーチン構想実現上の「阻害要因」となっている状況を改善する具体策をプーチン自身に立ててもらい、かつ、地方政府・企業の現場責任者に対し、事業遂行のための罰則付き徹底方策を制度化してもらうことが必要である。この2つを、プーチンに約束させることが欠かせない。そのためにも、プーチンとの信頼関係の構築がカギとなる。

 日本政府は、「待ちの外交」から「局面打開の積極外交」に転じ、日露双方の「国益」を正確に認識して、良好な信頼関係構築の上に、戦後長年の懸案であった領土国境画定問題を、最終的には「択捉島」と「ウルップ島」との間に国境線を引くかたちで解決に導かなければならない。プーチン大統領が返り咲くとして、在任12年の間に、日本の投資で開発の進んだ島々で、元千島住民およびその遺族らと共に、ロシア人住民も含め、記念式典が盛大に催される日を目指して、日本国民一人ひとりが知恵を絞って臨もうではないか。

◆WEDGE2012年2月号より


 




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