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2019年8月29日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2010年京都大学文学部卒業、2013年北京大学歴史学系大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

 道東エリアの最東端にある別海町は、一大酪農地帯として知られる。大型の経営が多く、搾乳ロボットのような最新鋭の設備を導入する農家もいる。同町の農家2軒がグローバルGAPを昨年12月、酪農家としては国内で初めて取得した。日本版GAP認証(JGAPなど)もある中、グローバルGAPを取ったのは、輸出狙いからではない。国際標準となっているグローバルGAPの考え方の理解に加え、欧米を中心に作られたルールを日本に合うように変えるため、足場を作る意味がある。

別海町には牧草地を持ち、飼料から生乳まで一貫して管理できる経営体が多い

グローバルGAP取得はベトナムが突出

 GAPはGood Agricultural Practice(良い農業の実践)の略で、「農業生産工程管理」とも訳される。農作物の安全性や労働環境、環境への配慮などを認証する仕組みだ。東京オリンピック・パラリンピックでは食材の調達時にGAP認証を取得している農産物が優先されるとみられる。国内ではオリンピックを一つの山場に、取得が進みつつある。

 ただし、酪農向けのJGAPの運用は昨年始まったばかりだ。JGAPから派生したASIAGAP(アジアGAP)はGFSI(世界食品安全イニシアチブ)の承認を得ていて、国際的な規格として認証されている。ただし、アジアGAPは酪農に対応していない。そのため酪農に関しては、日本発で国際的に通用するGAP認証は存在しない。

 別海町では、2月に2農家がJGAPを取得した。それに先駆けて同じ農家が昨年12月、グローバルGAPを取得した。取得にあたって、事前にコンサルタントを招いて指導してもらい、そのうえで審査を受けた。驚くのは、コンサルタントと審査員がどちらもベトナムからやって来たということだ。別海町議でGAP取得を支援した小椋哲也さんは「酪農のグローバルGAPの取得で、世界で1番取り組みが進んでいるのはベトナム」と話す。

 ベトナムに酪農のイメージを持つ人は少ないだろう。その実、政策的な後押しもあって、2000年代から酪農が発展し、飼養頭数と生乳生産量は飛躍的に伸びている。国産生乳を調達するため、乳業会社の大手が大規模な直営農場を開設している。そんな中でも乳業最大手のビナミルクがグローバルGAP取得に熱心だという。

 「ビナミルクは、輸出と国内でのブランド価値の向上を目指し、直営農場では100%グローバルGAPを取得した。ヨーロッパに輸出し、『ヨーロッパに輸出できる乳製品』というブランドイメージを国内で展開している」(小椋さん)

 取得が進む背景には、酪農に限らず農林水産業全体が輸出に熱心なこともあるようだ。

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