2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2019年8月29日

新たな脇役も独特の演技でストーリーに味わいを

 翌日、凪はみすず(吉田)が大型クレーンの操縦士しながら、建設現場の職長として自立した女性であることを知る。母子家庭のために、うららが友達からいじめられていると思っていたが、実は自分で友達を選んで明るく過ごしていたことも知る。

 「わたし、旅に出ます」――凪はうららに告げて、自転車をこいでゴンとふたりで行った海辺を目指す。ゴンとの出発点に戻って、彼と別れる決意を示そうとした。しかし、道に迷って、スナック「バブル」にたどり着く。ママ(武田信治)は凪を気に入って、ボーイに雇う。実は、ここは慎二の行きつけだった。

 第6回(8月23日)に至って、慎二の恋模様はちょっと複雑になる。大阪支社の営業成績ナンバーワンの市川円(唐田えりか)と営業のコンビとなり、ほのかな恋愛感情がめばえた。唐田えりかについては、このシリーズで若手女優のなかで、その演技をぜひご覧いただきたい、と推したい。映画「寝ても覚めても」(2018年、濱口竜介監督)や最新のNHKドラマ「デジタル・タトゥー」などで、伸長著しい。本ドラマでも、その美貌は画面に輝くばかりである。

 凪がハローワークで知り合った、坂本龍子役の市川実日子の独特の味わいのある演技も見どころである。東京大学法学部卒の高学歴の坂本は、職場の空気が読めずに、退社を繰り返してきた。たまたま出会った大学の先輩に誘いで、彼のセミナー会社に勤めることになった。副職のためのセミナーを開いていたが、詐欺まがいの商法と社員の給与を払わなかったり、ネットの情報だけでもブラック企業だった。

 凪は慎二の協力を得て、坂本(市川)を、そのセミナー会社から救いだす。慎二が去り際に、その顔を見た坂本が気づく。

 「あなた、『白い恋人』を持ちながら、泣いてましたよね」

 さて、ゴンの心境にも大きな変化が訪れていた。「これからは、隣人としてよろしくお願いします」と、凪に男女の関係を断たれた瞬間から、彼女に会うと胸が苦しくなるのだった。

  
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