世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年9月13日

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 TICAD7(Tokyo International Conference on African Development; 第 7 回アフリカ開発東京国際会議)が8月28~30日に、横浜で開催された。冷戦終了とともに国際社会がアフリカへの関心を喪失した時、日本は、世界のアフリカ開発への関心を維持すべく、1993年に初めてTICADを開催し、その後、同会議は制度化された。これは日本外交の成功事例の一つと言えよう。

(PhatsaYui/Anastasiia Vasylyk/Vintervarg/iStock / Getty Images Plus)

 TICADは、日本政府が主導するが、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催している。今回のTICAD7には、アフリカ53か国、開発パートナー諸国52か国及び108の国際機関や地域機関、民間団体等を含む約1万人が参加した。

 日本が始めたアフリカ諸国との国際会議であるが、その後、中国なども同様の会議を開催するようになった。中国は2000年から「中国・アフリカ協力フォーラム」という名称で始め、アフリカ諸国の首脳とのパイプを利用して、大規模インフラ案件等、積極的投資を行っている。ロシアは、今年10月24日、同様の会議をソチで開催する予定である。

 その間、中国は、アフリカで一層存在感を強めている。特に、最近では、デジタル、メディア分野等の先端技術のインフラ建設でも、中国の進出が著しいことが指摘されている。

 嘗てアフリカへの主要な資金源はODA(政府開発援助)であったが、このODAは、民間投資に凌駕され、民間投資は今やODAの2.5倍以上になっていること等、アフリカ開発をめぐる状況は大きく変わっている。今回のTICAD7においても、今後3年間で民間投資は200億ドル以上を目指すとされ、ODAは80億ドル程度とされた。

 TICAD7後、ますます日本の民間投資が成果を上げられることを期待したい。なお、最近我が国経済界のアフリカへの関心は強化され、また国民のアフリカへの関心も高まっていることは良いことである。 

 対アフリカ外交は、政治、経済的に重要である。アフリカは巨大な市場になりつつある。サブ・サハラの人口は、1990年代は6億ぐらいだったが、今や12億人、国連の人口推計によると人口は増え続け、2035年には、中国とインドを抜き、2070年には30億人にまで増加すると見込まれている。 

 アフリカ経済をマクロ的に見れば、これまでは5%程度の成長率で、世界的に困難な今でも年平均 3.5%程度の成長が予想されている。今年7月には、 AU(アフリカ連合)が、アフリカ大陸自由貿易圏が正式に発足したと発表した。政治的には、2000年代頃の民主化の勢いはなく、南アフリカのように目下問題を抱えている国々があることは懸念される。他方、スーダンのような民主化の動きもみられるが、前途は予断を許さない。

 発展を内部化し、持続的に開発を進めるためには、完全ではないものの一定限度の良い政府は必要である。また民主化は漸進的にしか進まず、それを待っていては、開発は進まない。開発と民主化は同時に進行せざるを得ない。夫々の状況を踏まえてベストなミックスに努めるということではないか。それは多分に程度の差でもあろうし、最終的には、常識的に判断すべきものではないか。 

 まだまだ、政治的にも、経済的にも、社会的にも安定しないアフリカではあるが、その潜在力には、大きな可能性がある。TCAD7が、そんなアフリカの潜在力を引き出す良い機会となり、開発及び民主化が広大なアフリカで少しでも望ましい形で進むことを期待したい。

 なお、今回、TICAD7では、中国の提唱する「一帯一路」構想にアフリカ諸国が組み込まれ「債務の罠」にはまらないようにということを念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉や「質の高いインフラ投資」、「持続可能な開発」等が最終日に採択された「TICAD横浜宣言」に盛り込まれた。国連安全保障理事会常任理事国入りを目指す日本にとって、アフリカの一つ一つの国との関係も大切になってくる。

  
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