2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年2月20日

 案の定、米中両政府は習氏訪米時に発表した合意文書に、TPPと日中韓FTAについて、情報を交換していくことを盛り込んだ。「中国はずし」ではないことを米中で確認した形だ。

米中関係の冷静な分析を

 昨年、オバマ大統領はオーストラリア議会の演説で太平洋地域における米国のプレゼンスと任務を「最優先事項」とすると強調した。東アジアサミットでは、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部加盟国との領有権争いがある南シナ海問題について、国際法に基づく平和的な解決を求めた。

 今年1月には、中国への対抗色を鮮明にした新国防戦略も発表した。南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンやベトナムも歓迎している。国防費を大幅削減しながらも、米軍の「アジア回帰」は進む見通しだ。

 だが、米国の対中政策は「封じ込め」ではなく「関与政策」が基本であることに変わりはない。北朝鮮やイランの核開発阻止、欧州危機で揺れる世界経済の活性化には、中国の協力が不可欠だからだ。

 オバマ大統領は習氏との会談で「中国の平和的な発展を歓迎する。強く繁栄し安定した中国は、アジア太平洋と世界の繁栄と安定に有利だ」とし、米中関係強化が「死活的に重要だ」と述べた。

 硬軟両様の働き掛けをしながら、中国を国際社会と協調でき、民主化した「あらまほしき大国」に誘導したいというのが米国の本音だろう。日本にとって対米、対中関係は非常に重要なことはいうまでもない。それをきちんとやっていくには、米中関係について、冷静な分析を行う必要がある。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信中国総局記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜

 


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