立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年9月6日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

振り出しに戻る、「雨傘運動」モードにリセットできるか?

 見ての通り、前3項目の訴求は、いずれも法的手続の規定であり、法の支配という観点からも、法の適正手続の保障が一種の先決となる。

 たとえば、警察に対する監督監査について、所定の監警会が公正でないかもしれないが、では別途独立調査委員会を設立して調査に当たらせれば、公正性が保障されるのかという問題もあるし、あるいは、今後政府側も勝手に別途独自の機関を設立したり、他の方式の手続を動員してもいいのか、という同根の問題が生じるわけだ。

 ゆえにこの3項目の訴求にフォーカスして抗争を継続するには、一定の困難があるように思える。さらに欧米諸国をはじめとする国際社会の同情や支援をどこまで引き出せるかという疑問も残る。

 すると、ポイントは第4の訴求、1人1票の「普通選挙権」というところに移らざるを得ない。

 繰り返すと、前3項目の訴求は、たとえどんな問題があろうと、「悪法もまた法なり」の原則に直面せずにいられない。それは、ギリシャの哲学者であるソクラテスの言葉に由来し、たとえ悪法だとしても、法律として守らなければならないというたとえで、いくら悪い法だとしても、法治国家であれば勝手に法を破ってはいけないという考え方である。

 第4の訴求は、そもそも法そのものが「悪法」ではないかという主張に立脚する。すると、「法理」という深層に触れざるを得なくなるため、話はそう簡単にまとまらない。今後「検討していきましょうよ」と、行政長官がいっているわけだから、そこで「牛歩戦術」だの「嘘つき」だの批判し一蹴するには、さらなる「闘争」が必要になってくるだろう。

 つまり、「反送中」運動の継続には、方向性の調整(テーマの変換)が必要であり、「普通選挙権」を求める運動に切り替えるとすれば、またもや2014年の「雨傘運動」という振り出しに戻ることになる。

 そういうことであれば、「条例の撤回は喜べない」という理由も頷ける。ここからは、「第二次雨傘運動」あるいは「香港民主化運動」にスイッチし、モードをリセットすることはできるのか。リセットできたとしても、それがうまくいくのか。一連の問題が横たわっている。

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