WEDGE REPORT

2019年9月10日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

首相はリップサービスにつとめたが

 安倍首相は会談で、大統領がビデオ祝辞を送ったことに対して、「我が国の立場を伝達した」(外務省)というが、強く抗議したのか、日本の立場を言っておく程度だったのか明らかではない。抗議なら抗議と、外務省は説明するだろう。

 首相は、フォーラムで「ゴールまで、2人の力で駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」(9月6日付け、毎日新聞)とプーチン大統領に呼びかけた。ずいぶんと甘い言葉だが、首相は、クリミア併合を契機にG8サミット(主要国首脳会議)を追放されたロシアの復帰に賛成する意向も表明した。これに対する大統領の言葉が、すでに触れた日米安保に関する大統領の発言だった。

 こんな中で11月にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて再び会談するというが、河野外相はどんな準備作業をするのだろう。絶望的な状況であるにもかかわらず、日本側が交渉をずるずる続けるのはもはや、みていて痛々しいとすら感じる。

不法占拠されている島へ観光ツアー

 首脳会談では、北方領土での共同経済活動について、「精力的に取り組んでいくことを確認した」という。領土問題が解決する見通しが立たない中で共同経済活動だけを続けるのは理解できないが、もっと驚いたのは、その一環として北方領土への「観光パイロットツアー」の10月実施で合意したことだ。

 不法占拠されているところに物見雄山にでかけること自体、議論はあろうが、それは置くとして、日本の領土である北方4島を訪問するのに、なぜロシア側と協議する必要があるのか。「日本は北方4島を領土をロシア領と認めている」と思わせることにつながらないか。もちろん、「日本の法的立場を害するものではない」ということを先方に明確に伝えたうえでのことだろうが、相手はロシアだ。つけこまれるようなことは避けたほうがいい。このツアーを「悪い冗談」と評したメディアがあった(9月6日付け産経新聞「主張」)が、そのとおりだろう。

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