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2019年9月10日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

低価格になる理由

 ウーバーが現在取り組んでいるのは、主に医療機関と提携し、アポイントメントを持つ患者にウーバーによる送迎を提供する、という試みだ。もちろん高齢者自身が自分でウーバーを呼んで医療機関に移動することもあるが、そうしたテクノロジーを使いこなせない層に対し、医療機関側が手を差し伸べる、という方式だ。

 

 ウーバーは早い段階からヘルスケアサポートの可能性を模索していた。2014年にはオンデマンドでインフルエンザの予防接種を行う、というサービスを実験的に開始した。高齢者などがウーバーを呼び出し、医療関係者が乗車した車が自宅まで来て予防接種を行う、というサービスだ。その後も世界中で「献血のためのライドシェア」「マスクその他医療関連商品の自宅配達」など、様々な試みを行ってきた。

 今回サービスが始まるウーバー・ヘルスは主に医療機関向けだが、医療機関として「アポイントメントが守られ、患者の健康状態を確実にチェックでき、タクシーや救急車よりも安い価格で、安全に患者を搬送できる」というメリットがある。

 なぜ安いのか。現在ウーバーの料金は、同じ距離をタクシーで走行した場合のおよそ半分。ウーバーはこの安い料金をパッケージとして医療機関と契約する。救急車も保険でカバーされない場合、数百ドルから時には1000ドルを超える価格となる場合もあるが、ウーバーが提携して運営を行うものは低価格になる。

 またサービスに際し、ウーバー側では「利用者からの評価の高いドライバーのみを選別、第三者による障害を持つ人へのアシストの訓練を受けたドライバー、高齢者や障害のある人が乗り降りしやすい形状の車」を提供し、自宅から医療機関まで、利用者をアシストしながら安全に送り届ける、としている。特にウーバーWAVと呼ばれる車両は車椅子ごと乗り込めるよう設計されており、医療機関への往復だけではなく日常的な買い物などの外出にも利用できるサービスとなっている。

 高齢ドライバーによる事故は米国でも深刻な問題だ。米国では高齢者がゆっくりと移動できる「ネイバーフッド・カー」と呼ばれる、ゴルフカートを改造して公道を走行できるようにしたものなど、様々な工夫が行われてきた。しかしウーバーなどが月額制で自由に利用できるライドシェアを高齢者向けに提供するようになれば、医療機関への往復だけでなく様々な日常の不便さが解消できる。今後こうしたサービスの必要性が生まれてくるのではないだろうか。

  
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