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2019年9月10日

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イギリス下院(定数650)は9日、ボリス・ジョンソン首相が提出した解散総選挙の動議を否決した。最大野党・労働党をはじめほとんどの野党議員が反対・棄権し、実施に必要な3分の2の支持を得られなかった。

この日は、ジョンソン首相が8月に発表した5週間の議会閉会前の最後の審議日で、欧州連合(EU)との合意なくEUを離脱することを禁じる野党提出の法律が成立した。また、政府に閉会の経緯や合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)計画に関する資料を公開するよう義務付ける法案も可決された。

総選挙否決に先立ち同日、ジョン・バーコウ下院議長が辞意を表明している。

英議会は今後、10月14日まで閉会する。そのため、10月31日のEU離脱期限前の総選挙は事実上、不可能となった。

解散総選挙の投票結果は賛成293、反対46、棄権303で、実施に必要な434票を大きく下回った。ジョンソン首相にとっては就任後、6度目の動議否決となった。イギリスでは2011年の議会任期固定法(FPA)により首相の議会解散権が制限されており、解散には内閣不信任案の可決、または下院議員の3分の2以上の同意が必要と定められている。

野党の労働党とスコットランド国民党(SNP)、自由民主党、緑の党、変化のための独立グループ(IGfC)、プライド・カムリ(ウェールズ党)は9日午前に、この動議を支持しないことで一致していた。また、保守党からは6人が棄権した。

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ジョンソン首相は、労働党のジェレミー・コービン党首が合意なしブレグジット阻止法が成立すれば総選挙を支持すると発言していたことを取り上げ、「コービン氏自身の理論によれば、総選挙を支持すべきだ」と指摘した。

これに対しコービン氏は、労働党は「総選挙を望んでいるが、合意なしブレグジットという惨事によってもたらされる地域社会や雇用、サービス、権利への危険性への準備ができていない」と反論した。さらにコービン氏は、議会閉会によって首相が離脱政策の審議を避けていると非難した。

議会は閉会へ

この日の議会は9日午前1時(日本時間午前9時)過ぎまで続いたが、その後、議会閉会の儀式に入っている。

ジョンソン首相は、閉会期間中にEUとの離脱協定締結に向けて交渉を進めると述べた一方、「合意なしの準備も進める」と話した。

「議会がどれほど私の手を縛る方法を編み出そうと、私は国益のために協定締結に向けて奮闘する」とジョンソン氏は語った。

「そしてこの政権は、ブレグジットをこれ以上遅らせない。国民投票ではっきりと示された国民の意思をゆっくりと窒息させることは許されない」

合意なし離脱阻止法、首相は対決姿勢

しかし、上下両院が今月初めに可決した合意なしブレグジット延期法案は9日、エリザベス女王の裁可を得て正式に法律として成立した。

この法律は、10月19日までにイギリスとEUが離脱条件について合意できなければ、首相はブレグジットの期限延長をEUに要請しなくてはならないという内容。

ジョンソン首相は合意のあるなしに関わらず10月31日にブレグジットを強行したい構えで、新法の「限界に挑む」として対決姿勢を明らかにしている。

これに対して9日の審議では、労働党のコービン党首が政府に法律順守を要求。正式な採決ではないが、多数の議員がこれを支持した。

コービン氏は、ブレグジット期限延期法に絶対に従うと首相が言明しないのは、「法治主義への攻撃だ」と批判した。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長によると、首相官邸はこの法律を破るのではなく、回避する手立てを模索しているという。

ブレグジット延期の回避策としては、EU加盟国に期限延長を拒否してもらう、法律にのっとって期限延長を要請した後にそれを否定する書簡を送る、などの方法が議論されていると報じられている。

しかし、英最高裁判事だったサンプション卿はBBCのラジオ番組で、こうした計略は違法となる可能性があると指摘した。

政府に情報公開を義務付け

9日にはほかにも、ジョンソン首相の敗北が相次いだ。

下院は、議会閉会に関する政府内の連絡記録の公開と、「オペレーション・イエローハンマー」と呼ばれる政府の合意なし離脱に関わる政府資料の全文公開を求める法案を賛成311、反対302で可決した。

合意なし離脱の内部資料は、7月23日から閣僚に配布されていたもので、8月に流出・報道されてその存在が明らかになった

この法案を提出したドミニク・グリーヴ議員(元保守党、無所属)は、「議会が関連リスクを理解し、より広く公に通達できる」ようにするため、情報公開は「まったく利に適っている」と説明した。グリーヴ議員は、合意なし離脱阻止法案に賛成し政府に造反したため、保守党を除名された議員21人の1人。

これに対し、合意なし離脱の準備を担当するマイケル・ゴーヴ・ランカスター公領相は、政府はすでにEUにイエローハンマーの証拠を提出しているので、「この保証で十分だと思う」と話した。

バックストップ除外をあらためて強調

ジョンソン首相はこの日の審議前、就任後初めてアイルランドのリオ・バラッカー首相とダブリンで会談した。

ジョンソン氏は記者会見で、ブレグジットの懸念材料となっているアイルランド国境をめぐる「バックストップ」条項を破棄し、代わりとなる合意を含む離脱協定を新たに締結することは可能だと話した。

また、合意なしブレグジットは、「我々全員が責任として持つ政治手腕の失敗」になるだろうとも話した。

これに対しバラッカー首相は、バックストップの「代替案は歓迎する」ものの、「現実的なものでなくてはならない」と強調。「現時点でそのような提案はもらっていない」と述べた。

バックストップとは、通商協定がまとまらない場合に、北アイルランドとアイルランドの国境に厳格な検問所等を設置しないための措置。

バックストップが発動すると、イギリスは実質的にEU関税同盟にとどまり、EU法に縛られる。また、北アイルランドもEU単一市場のルールに従うことになる。

バックストップの解除にはイギリス・EU双方の合意が必要なため、ジョンソン首相をはじめとするEU離脱派はこれに猛反対し、協定からの除外を求めている。

(英語記事 PM's second attempt to trigger election fails

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49643995

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