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2019年9月11日

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イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は11日、同国が占領しているヨルダン川西岸の一部を、来週にも併合すると発表した。

ネタニヤフ首相は「ヨルダン渓谷と死海の北部にイスラエルの主権を発動する」と述べた。イスラエルは1967年の第3次中東戦争以来、ヨルダン川西岸を占領しているが、併合には至っていない。

これに対しパレスチナのサエブ・エレカット外交官は、併合の動きは「和平の機会を奪ってしまう」と懸念を表した。

総選挙で支持得られるか

パレスチナは、ヨルダン川西岸全体の主権を主張しており、ゆくゆくはここに独立国家を樹立したい考え。一方、ネタニヤフ首相は、安全保障上の理由から、ヨルダン渓谷には常にイスラエル軍を保持しておきたいとしている。

イスラエルは17日に総選挙を控えている。世論調査ではネタニヤフ首相率いる右派の与党リクードと中道野党連合「青と白」の支持率が拮抗(きっこう)している。リクードが勝利しても、連立政権を組むのに苦労する可能性がある。

こうした中、ヨルダン川西岸の併合は、ネタニヤフ首相が連立を考えている右翼政党の支持を得られるものだとの見方が強い。


「ただちに主権を発動」

ネタニヤフ首相がヨルダン川西岸の一部の併合に言及したのは、この日のテレビ演説だった。

首相は「総選挙後、ただちにイスラエルが主権を発動できる場所がある」と述べ、こう続けた。

「イスラエルの市民の皆さん、もし皆さんから明確にそうすべきとの信任を得られるなら(中略)私は次期政権の樹立とともにヨルダン渓谷と死海の北部にイスラエルの主権を発動することをきょうここに発表する」

また、ヨルダン川西岸の全てのユダヤ人入植地も併合する予定だが、これにはドナルド・トランプ米大統領が取りまとめているイスラエルとパレスチナの和平合意計画の発表を待つ必要があると話した。

ネタニヤフ首相によると、トランプ氏が「世紀の合意」と呼んでいるこの計画は、総選挙から数日のうちに発表される見込み。首相は、「青と白」はこの政策には対処できないと強調した。

ネタニヤフ氏はこの日、イスラエル南部アシュドッドで選挙演説を行っていたが、パレスチナからロケット弾が飛来する危険性を知らせるサイレンが鳴ったため、演説を中断してシェルターに避難した。

イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ地区から2発のロケット弾が発射されたが、防空システム「アイアンドーム」で撃墜したと発表した。

パレスチナの反応は?

ネタニヤフ首相の演説前、パレスチナ自治政府のムハンマド・シュタイエ首相は、ネタニヤフ氏は「和平プロセスの主要破壊者」だと批判していた。

また、パレスチナ政府の高官ハナン・アシュラウィ氏もこれに同調。アシュラウィ氏はAFP通信の取材で、ネタニヤフ氏は「2国家共存の解決をくじくだけでなく、あらゆる和平の機会を壊している。これでは全く状況が変わってしまう」と話した。

パレスチナ国家を樹立してイスラエルとの共存を図る2国家共存は、両者の和平プロセスの基礎となっていた。しかしトランプ大統領は、自身の和平計画に2国家共存が含まれていると明言していない。

エレカット外交官はツイッターで、「我々はこの紛争を終わらせるべきで、ネタニヤフが考えているように向こう100年これを続けてはいけない。国際法で、併合は戦争犯罪になることを忘れるな」と警告した。

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イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、ヨルダン川西岸と東エルサレム、ガザ、シリアのゴラン高原を占領。1980年に東エルサレムを、翌1981年にゴラン高原を併合したと発表したが、どちらも国際社会には認められていない。

アメリカもこれまで国際社会に同調していたものの、トランプ政権になって東エルサレムとゴラン高原がイスラエル領だと認めると述べ、立場を覆している。

イスラエルとパレスチナの紛争の中心はヨルダン川西岸のゆくえだ。イスラエルはこれまでに西岸や東エルサレムに約140カ所の入植地を建設しているが、国際法上では違法に当たるとみられている。

総選挙はどうなる?

イスラエルでは4月に総選挙が行われ、ネタニヤフ首相率いる右派の与党リクードはイスラエル議会(定数120)で35議席を獲得。右派連立政権の樹立を目指していたが、5月末までに合意に至らなかったため、9月17日の再選挙が決まった。

連立が成立すれば、ネタニヤフ氏は5期目となるはずだった。連立の妨げとなったのは、アヴィグドル・リーベルマン前国防相が率いる極右「わが家イスラエル」との確執。リーベルマン氏は連立の条件として、超正統派のユダヤ教神学校生徒の徴兵免除を廃止する法案の成立を訴えていた。

今回の総選挙の後も、数週間にわたって連立をめぐる協議が続くとみられている。

ネタニヤフ首相をめぐっては現在、3件の汚職疑惑の捜査が続いている。首相は全ての疑惑を否定しているが、司法長官は首相を正式起訴するかどうかの判断を迫られている。

(英語記事 Netanyahu pledges to annex occupied Jordan Valley

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49658185

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