2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月10日

 キッシンジャーは、過去の中華帝国の膨張は基本的に文化的優越による浸透ないし同化であって、軍事力による征服ではないと解釈し、今日の共産党支配もその伝統を踏襲していると言いたいのかもしれません。しかし、過去の膨張は、軍事・経済・文化の総合力によるものであり、軍事力は行使しなくとも、軍事力で威圧してきたというのが実態です。さらに、ベトナムや朝鮮半島などから見れば、これとは全く違う見方になるに違いありません。

 また、キッシンジャーは、中国のような経済大国が軍事力を持つのは例外的現象ではない、と中国に「理解」を示していますが、急激な軍備増強の中身が依然として不透明で、何を目指しているのかが不明瞭なことについては、特に周辺諸国に脅威を与えるものとして、日本は引き続き中国に問いただしていく必要があります。

 中国の高度成長は、第2次大戦後の国際秩序の中で実現したものであり、中国はその受益者ですが、そうした認識を中国指導者の口から聞くことはありません。逆に、既存のルールに従わず、新しいルールを作ろうとするところがあり、これが、関係国の強い警戒を呼んでいることへの認識が欠けています。

なお、キッシンジャーの見方には、41年前、ニクソン訪中を劇的に演出した立役者として、冷戦時代の中国観へのノスタルジーを感じさせるものがあると言えるでしょう。

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