2024年4月17日(水)

ペットビジネス最前線

2012年4月12日

 また、自社のフードを継続して使用させるために、フードの切り替えをさせないような説明も行っているメーカーもありました。単一の食事を長年与えることや食品添加物が起因とされる弊害(腎臓疾患・肝臓疾患・アレルギーなど)が急増し、飼い主の不利益となっているケースが多くあります。

 今では獣医師の中からも問題が指摘されており、予防医療を真剣に行う医師の間では、既存のフードに頼らない食事を提唱する動きも出てきています。

「総合栄養食」の可能性

 ここから先は少し私見が入ってしまいます。ペットフードの種類の中に「総合栄養食」というものがあります。その定義は「ペットフードのうち、犬又は猫に毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養素的にバランスのとれた製品」です。(http://www.petfood.or.jp/knowledge/kind/index.html

 人間の食事でこのようなものはあるのでしょうか? 医学や栄養学は人間の方が先行して発達しているはずですが、人間という単一の種に対して総合栄養食が存在していないのに、動物用があるのには驚きです。

 生き物は生きるために必要な全ての栄養素やエネルギーを食事に依存しており、必要な物は吸収し、不要・余分な物は排除して健康な状態を維持するという力を持っています。ホメオスタシスという言葉を使いますが、これらの機能が崩れると健康ではない状態となってしまう。この原因が、有害とされる食品添加物や偏った食事内容、ストレスや運動不足と考えられています。

 人間でも三大疾患と言われる心筋梗塞や脳梗塞、癌などの引き金になる生活習慣病の原因の大きな要素として、食事内容が挙げられています。効率的で手軽、かつ収益を多くあげられるファーストフードやジャンクフードなどから、昔ながらの調理方法や季節ごとの地域の食材を使ったスローフードやローフードといった食事が、健康志向と共に見直されています。何のことはない、健康を維持するためには食事の原点回帰が重要、と言われているのです。

高まるペットフードへの意識

 ペットに対しても同じなのではないのでしょうか? 実際ドライフードでも、オーガニックや保存料不使用・無添加などを謳った商品や、犬種別で必要となる栄養素のバランスを変えた商品などが売上を伸ばしているため、大手メーカーなども商品の切り替えを行っています。

 フードの輸入先も、食材に厳しい基準を設けているドイツやイギリスなどの商材が注目を集め始めています。手作り食の材料として、ペット用のシリアルや冷凍の生肉の需要も増えてきているようです。人間もそうであるように、ペットの健康や食事に関する意識が高まってきたのは非常に喜ばしいことだと考えます。それを象徴するかのように、某有名メーカーのフードは、原料への不信感などが取り沙汰され急激に売り上げを落としてしまいました。このような傾向は、これから先続くものと考えられます。

 こうして、ペットから「愛玩動物」へと飼い主の意識が向上し、フードの原料を気にするようになってきたところに、海外で毒性の強い物質が混入したドライフードが原因の大量死亡事故が起きました。これらが引き金となって、日本でもようやく法的な整備が出来上がったという経緯があります。ペットブームと言われて十数年経つのですが、この法整備はほんの3年前の出来事なのです。


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