スウェーデンで生きる 海外移住だより

2012年4月16日

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伊藤清香 (いとう・さやか)

2年半の遠距離恋愛を経て、2008年冬にスウェーデンに移住した。「移民」としての生活に悪戦苦闘しながらも、新しい土地での一からの可能性に、人生を模索中。

一方で、人気の下降も目立つ

 しかし、新王女誕生で盛り上がる一方、近年は共和主義協会の活動も盛んになり、国民の間でも、王政・王室の人気が下降気味にあるという数値も出ています。

 社会・情報研究調査団体(Forskningsgruppen för Samhälls- och Informationsstudier)が行った調査によると、1996年には国民の70%が王政を支持していたのに対して、2010年には46%に減少。王政に否定的な世論は15%から25%に、王室に否定的な世論は13%から28%に上昇しています。また、共和主義協会によると、今年最初の四半期だけで会員が7962人から9703人に、つまり約22%の増加となりました。

 こうした傾向の背景には、民主主義、平等社会のより一層の確立、そして王室の人権保護といった理由に加え、近年取り沙汰される王子王女の恋愛問題や贅沢な私生活パーティーの報道、そしてシルヴィア王妃の父親がナチス党員だったことの発覚なども挙げられます。

 さらには、2010年11月にカール・グスタフ国王の過去の女性問題やポルノクラブ通いなどを暴露した本が出版。その後、その証拠隠滅のために犯罪組織と取引をしていたことも明らかになりました。ここ最近は、カール・グスタフ国王の退位を求めると共に、ヴィクトリア王女に早く王位を継承すべきだという声が強まっています。国民との距離が比較的近い分、オープンな部分が場合によってはバッシングの対象になることもあるのかもしれません。

民間人だった王子の並々ならぬ努力

 2010年6月19日、ヴィクトリア王女は長い交際期間を経てダニエル王子と結婚しました。二人が出会ったのは2001年のこと。慣れない公務や体型をバッシングするメディアに疲労したヴィクトリア王女は1996年頃から食欲不振に悩まされ始め、1997年秋、王室が正式にヴィクトリア王女の拒食症を発表しました。その後王女は、治療と安静のためにアメリカに渡り、しばらく公式の場から離れます。2000年にスウェーデンに戻ってきたヴィクトリア王女にジムに通うことを勧めたのが、妹のマデレーヌ王女でした。そして、そこでヴィクトリア王女のパーソナルトレーナーに就いたのが、ダニエル王子だったのです。2002年、二人の交際が公になります。

 しかし、完全な民間人だったダニエル王子との交際は、当初王室からも社会からも強く反対されました。一部では「無愛想」「田舎者」というダニエル王子への中傷も飛び交いました。ですが、ヴィクトリア王女の元気で幸せな姿にいつしか王室も社会も、ダニエル王子を迎え入れられるようになりました。この間の王子の努力も並々ならぬもので、立ち振る舞いから服装、マナー、英語・仏語・独語の習得や美しいスウェーデン語の話し方、そして歴史や公務に関する教養を積んでいったのです。こうして2009年2月24日、ヴィクトリア王女とダニエル王子の婚約が正式に認められました。

飛行機で王室御一行と遭遇!

 昨年の夏。なんと、ヴィクトリア王女夫妻そしてマデレーヌ王女と同じ飛行機に乗り合わせました。

 遅い時間だったとは言え、専用機などではなく、ごく普通の便に乗っていたことにまず驚きました。さらには、御一行がなんと私達に混じって荷物受取り場で待たれていたのです。ボディーガードはもちろんいましたが、たった3席ほど離れたベンチに座ってみても警戒する気配もありません。あたかもそれが当然かのような大衆的な姿には、やはりとても親近感が沸きました。一方で一般の人々も、興奮の空気は漂っていたものの、大騒ぎしたり写真を撮ったりするような人はいませんでした。個人の人権を思う気遣いが、なんともスウェーデン人らしく素敵だなと思った瞬間でした。

 日本の皇室もスウェーデンの王室も、国の象徴としてとても大きな役割を担っています。しかし、世界で民主主義化が進む中、どの国でも従来の社会体制は成り立たなくなってきており、スウェーデンでも国民の王室離れに対する危機感は年々増しています。そのような中、ベルナドッテ王朝初の女性元首であり、民間人と結婚したヴィクトリア王女は、この風潮を変える切り札として期待されています。エステル新王女の誕生によって今後2代王女の即位が続くことも、スウェーデン王室にとっては一つの大きな転換点となるかもしれません。彼女たちが、国民との間に強い「絆」を結び、王室の存在感をどのようにして高めていくのか。スウェーデン国内のみならず、皇位継承問題を抱える日本の関心も集めるでしょう。


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