世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月11日

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 ワシントン・ポスト4月21日付で、コラムニストのDavid Ignatiusが、習近平の訪米の間に起きた薄煕来事件を、米国は敢えて大きく取り上げようとせず、北京に処置を任せたが、これは、この秋の人事交代を控えて中国が米国との友好関係を必要としている時に当たって正しい措置だった、と評価しています。

 すなわち、薄煕来のケースは、氷山の一角であることは中国側も良く知っている。また、米国がこの事件をプレーアップしていたら、もっと大きな反響を呼ぶことになったということも中国側は承知している。そこを国務省は敢えてホワイトハウスの中堅の中国専門家の意見に従って、中国の国内問題として扱い、北京政府に薄本人を引き取らせてこの件を決着させた、

 共和党の政治家の中には、これを非難する人々もいるが、この措置は正しいと思う。その間、習近平の訪米は無事に済み、今後の米中関係の基礎を築くことが出来た。中国が、より開放的な制度に向かって変わることが期待される今、習近平の訪米の時期に、中国の問題点を敢えてさらけ出すのは愚かなやり方だ、と論じています。

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 イグネイシャスは、官僚組織の中枢に食い込み、優れた官僚を見分けて、彼らに共感しながら、情報を分析、報道することにおいては、他の追随を許さないものがありますが、最近時々しているように、自らの説を開陳するとなると、その内容は今一つの感があります。

 この論説は、おそらく「ホワイトハウスの中堅の中国専門家」から詳しい情報を得て、その意見を反映して書かれたものでしょう。

 そして、確かに、薄煕来事件は、中国国内のスキャンダルであって、自国民が殺害された英国政府は別として、外国政府が関与する必要のない問題ではあります。

 しかし、中国国内におけるこの事件のインパクトは、天安門事件に匹敵すると報道されている通りのようで、中国のインターネットは一斉に、中国上層部のスキャンダルを暴き、薄煕来が息子を海外留学させるためにコネと不正なカネを使ったことや、現在ハーヴァードにいるその息子の遊蕩児ぶり、薄の妻が英国人の殺害に関与したこと等々を大々的に報じています。これが、直ちに中国の政局や、習近平の後継人事にまで影響する可能性はあまりないでしょうが、人民のための革命を担って来たという建前の中国共産党の上層部のイメージの失墜は甚大なものがあると伝えられています。

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