WEDGE REPORT

2012年5月10日

政府は「新成長戦略」で先端医療機器産業の育成を掲げる。中小メーカーも、高齢化で市場の拡大が見込まれる医療機器産業に熱い視線を送る。だが、国内市場で売り上げを伸ばすのは欧米メーカーだ。成功するかどうかは医師や患者がほしいと思う機器を生み出せるかにかかっている。
技術に固執するあまり、市場が求める製品が出せずにいる家電メーカーの二の舞になってはいけない。

 2月21日、福島県郡山市で県などが主催する医療機器の大規模展示会「メディカルクリエーションふくしま2011」が開催された。過去最大150の企業と団体が出展し、約6割は県外の中小メーカー。ブースの数に限りがあったため、出展を断らざるを得なかった。

 福島県には内視鏡メーカーのオリンパスや世界最大の医療機器メーカー、ジョンソン・エンド・ジョンソンの国内生産拠点がある。精密加工や電子機器を得意とする多くの中小メーカーが、取引先拡大のため参加した。

 3月には、神奈川、長野、福井、石川と連日のように県や商工会議所が、医療機器分野に進出する企業向けのセミナーを開催している。冒頭の展示会を主催した福島県の担当者は「地元中小の空洞化を止めるため」と語る。中国や韓国に仕事を奪われる中小メーカーにとって、医療機器は「次なるメシの種」に映っている。

成功すれば大きい医療機器

 「数十億円で会社を買いたいというオファーもあった」

 こう話すのは、医療機器を製造販売する京都医療設計(京都府京都市)の伊垣敬二社長だ。2009年、同社は世界初の体に吸収されて溶けるステントを商品化した。ステントとは、狭くなった血管を内側から広げた状態に保つ小さな網状の管である。現在主流の金属製と違い、血管内に残らない溶けるステントは「すぐに売れる」とみた海外の大手メーカーが、会社を丸ごと買いたいと持ちかけたが、最終的には断られた。

 伊垣社長は、商品化までに20年という歳月と20億円の巨費を投じた。本業である医療機器の輸入や販売の収益があったからとはいえ、従業員50人足らずの同社にとって軽い負担ではなかった。世界のステント市場は1兆円を超える。伊垣社長は「金属ステントに代わる新たな技術」と、生体吸収性ステントの販売拡大に期待を寄せる。

 しかし、京都医療設計は稀有な例。高齢化に伴って拡大する医療機器市場だが、必ずしも日本の中小メーカーにとって魅力的とは言えない。国内市場は10年までの19年間で1.6倍に拡大したが、国内製造出荷額はほぼ横ばい。一方、海外からの輸入は2.6倍にも膨れ上がった。拡大分のほとんどを海外メーカーに持っていかれた格好だ。医療機器販売大手メディアスホールディングスの野中治男営業推進本部長は「欧米メーカーは、医師が欲しいと思う新しい医療機器を常に提供してきた」とその理由を説明する。

 例えば、4月から前立腺がんの摘出手術に公的保険が適用されるようになった手術支援ロボット「ダヴィンチ」。医師が内視鏡で映された患部の3次元画像を見ながら、遠隔で操作するロボットアームが手術を行う。出血が少なく、手ぶれを防止しながら細かな動きもできるため、1台3億円、維持費だけでも年間2500万円といわれるが、世界中で約2000台、日本でも数十台が導入されている。

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