世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月16日

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 The Diplomat のウェブサイト4月23日付で、米海軍大学の James R. Holmes が、米政府は、アジアに軸足を移すと言っているが、「中国」という言葉を使わないために、何のために何をするのかはっきりしない、正直に言った上で具体的な戦略を考えるべきだ、と言っています。

 すなわち、大西洋と太平洋に二大艦隊を維持するというのが、1940年以来の米国の戦略であり、米国は今後もやはり二つの大洋に海軍の主力を配備することになるだろう。しかし、それはかつてと違って、太平洋とインド洋ということになろう。

 こうして米軍はアジアにおける軍事力を強化しようとしているが、中国をヴォルデモート( ハリー・ポッターに登場する悪の魔法使い。その名を口にするだけで災厄を招く)扱いして、「中国」と言わないために、米軍がそこで何をするのかはっきりしない。仮想敵に対して率直であることは、友人や同盟国に対して率直であると同じように重要なことだ。

 では、中国に対して何をするかというと、エア・シー・バトル・ドクトリンのように、米軍の接近を拒もうとする中国の戦略を打ち破ることのほかに、中国が外に出てくるのを抑える戦略も必要だ、その一つとして、対艦ミサイルを装備した米軍部隊を南西諸島に配備することが考えられる。そうすれば、米軍の接近を拒否しようという中国側の行動を妨げることができる、と論じています。

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 外国と通常の平和的関係を持ちながら、一朝有事に備えるというのは、古来変わらない外交安全保障のディレンマです。極端な例は、日本の戦後の平和主義の下の基盤的防衛力構想、つまり、ソ連の脅威の絶頂期でありながら、仮想敵はないとしつつ一通りの武力は揃えておくという発想です。

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