世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月17日

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 Project Syndicate 4月23日付で、ノーベル賞を受賞した米国の経済学者、Michael Spence が、米中経済関係は今後どうあるべきかについて提言しています。

 すなわち、中国が低賃金を活かした低価格商品を作り、商品の相対価格を引き下げ、そのおかげで米国の消費者が富む、という従来の図式はもはや終わりを告げた。

 先ず、中国は先進国製品の主たる消費者になった。また、付加価値の階梯を上るにつれ、中国は自分で技術を開発しなくてはならなくなるだろう。他方、米国は、消費需要が拡大する中国に対してモノを売れるようになるため、貿易財セクターを伸ばさなくてはならない。そのためには、教育と輸送インフラに力を注ぐことが必要になるだろう。これらは米国にとって時間を要する問題だが、さしあたり中国からの対米直接投資に関する障壁を軽減するだけでも、短期的に米国経済に利する。

 また、中国の場合は、内需主体の成長に転換していくという政策方針は既に決まっているので、これを実施するのみだ。その際、イノベーションや教育を進めやすくするインセンティブをどうもたらすかがカギになるだろう、と言っています。

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 古い図式は変わり、今や米中間でモノと技術の矢印がそれぞれ一方向、つまりモノは中国から米国、技術は米国から中国へ、というものだったのが、少なくともモノは米国からも中国へ出て行くパターンになりつつあり、米中は今後いっそうウィンウィンの互恵関係になっていく、という見立てです。

 そして、米国民への提言として、教育・インフラへの投資と、輸出振興による経常赤字の縮小を説き、とりあえずもっと中国の投資を受け入れろというわけです。

 現象の指摘において陳腐、提言する政策項目は、意味こそ自明ですが、政治的に実現は困難、さらに、中国からの対米投資に政治性や安全保障の観点が欠落している点において無邪気、という困った論説です。ノーベル経済学賞受賞者に目先のイシューについてご託宣を期待してはならず、まして米中関係の見立てなど聞く方が野暮ということを示す典型というものでしょう。

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