2024年4月20日(土)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年5月16日

 したがって、今後も世代間格差が拡大するか、是正されるかは、現在の選挙制度を前提とすると、世代間格差の大部分を占める社会保障給付に関して、若い世代を政治的パワーで圧倒する高齢世代がどのような考えを持っているかに大きく依存している。

年金、医療、介護… 
高齢者の「本音」

(図1)「公的年金に要する税や社会保険料の負担が増加しても、老後の生活は公的年金のみで充足できるだけの水準を確保すべきかどうか」という質問に対して、世代により意識の違いが見られた
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 実際のところ、現在の高齢者は、社会保障制度に関してどのような考えを持っているのだろうか。このことを知る上で、大変興味深い3つの資料がある。

 1つ目は、社会保障制度を所掌する厚生労働省が行った『平成21年社会保障における公的・私的サービスに関する意識等調査』である。同調査によると、「公的年金に要する税や社会保険料の負担が増加しても、老後の生活は公的年金のみで充足できるだけの水準を確保すべき」との質問項目に対して、年齢が低いほど反対が多く、年齢が高くなるほど賛成が多くなっている(図1)。次に、「重要と考える社会保障の分野について」は、「老後の所得保障(年金)」、「老人医療や介護」は年齢が高い世代ほど重要と考える割合が高く、「少子化対策(子育て支援)」は年齢が低い世代ほど重要と考える割合が高くなっている(図2)。

図2「重要と考える社会保障の分野について」は、高齢世代ほど、少子化対策への重要度が低くなっている
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 2つ目は、内閣府が2008年に行ったアンケート調査とその分析結果である。それによると、中長期的な社会保障の選択肢として、「給付維持・負担上昇」と「給付削減・負担維持」を提示した結果、全体としては、「給付削減・負担維持」にほぼ半数の支持が集まったのに対して、年齢別に見てみると、年齢が上がるほど、「給付維持・負担上昇」への支持が高まり、60歳以上では低下している。

 特に、年金を受け取る直前の世代、いわゆる「団塊の世代」でその割合が最高に達している。内閣府の分析では、「団塊の世代」以上の年齢階層ではすでに年金を受け取っているため年金額が確定しているのに対し、「団塊の世代」は年金を受け取っていないため制度変更がなされると年金額が減額され、自分たちに不利になるからだとしている。

一貫した高齢世代の考え方

 さらに、社会保障財源としての消費税の目的税化について聞いているが、予想に反して、年齢が上がるほど目的税化への賛成度合いが高まることが分かった。わざわざ「予想に反して」としたのは、消費税の目的化が実施されれば、当然高齢者の負担が増すからだ。内閣府は、消費税の目的税化により少々負担が増すにしても「目的税化によって社会保障の給付が確保されることの方が高齢者にとって望ましいからだ」と大変皮肉な解釈を行っている。


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