WEDGE REPORT

2012年5月23日

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 福島県内で除染活動を行ってきたNPO法人放射線安全フォーラムの多田順一郎氏によれば、「そもそも汚染を撒き散らす高圧洗浄は除染の原則に反する。しかも、屋根に降り積もった放射性物質はこれまでの雨で既にかなり流されており、瓦や舗装の細かい隙間に残るものは高圧洗浄してもなかなか取れない。効果のない高圧洗浄はやめ、あまり線量の高くないところでは雨樋などのホットスポットに溜まった汚染を除くことに集中したほうがいい」。

 また表土の剥ぎ取りもやりすぎると汚染土が増え費用対効果が悪くなるため、丁寧に線量を測り場所を絞って行うのがよい。しかし、高圧洗浄や重機を用いた表土の剥離はテレビ映りもよく、頻繁に報道されるために、徹底的な実施を求める住民が多いという。

除染に伴う処理土の仮置き場(伊達市)。黒のシートで覆われた部分で16軒分。3000平方メートルのこの処理場全てでわずか40軒分
(撮影:編集部)

 福島県のなかでも先行して除染の知見を蓄積してきた福島県伊達市の半澤隆宏次長(除染対策担当)はこう語る。

 「外部被ばくの実効線量を減らすのが目的だから、一つひとつを完璧に、ではなく、線量の高いところから効率的に除染を実施していくのが大事。しかし、数字が独り歩きし、“下がっただけではダメ。年間1mSvを達成して”、“我が家の隅から隅まで徹底的に”、“隣があそこまでやったならうちも”という声が多く寄せられる。なかにはそこまでやるのは無駄なのではという市民もいるのだが、そういうことは言い出せない雰囲気になっている」

年間5mSv
線引きをめぐる迷走

 「追加被ばく線量が年間1mSv以上の地域は、国の責任で一刻も早い除染を進めていただきたい」

 4月26日、栃木県の住民団体「那須希望の砦」のメンバーらが約4万8千人分の署名を携えて環境省の高山智司政務官を訪れた。

 団体のメンバーによると、高山政務官は「署名を重く受け止める。除染対策はケチらない。地元自治体が発注する形なら、さかのぼってでも国の責任で費用を出す」などと答えたというが、その後も環境省幹部は「財務省との関係もあり、年間5mSv未満の地域にまで手厚く国が補助を出すわけにはいかない」と、態度を変えていない。

 議員立法で放射性物質汚染対処特措法が制定されたのが昨年8月。環境省は「放射線量低減対策特別緊急事業費補助金」を創設し、市町村が行う除染も費用負担する制度を整えた。この補助金の交付要綱と要領の作成にあたり、環境省が考えたのは、「比較的線量の高い地域」と「比較的線量の低い地域」で補助金対象を区分することだった。

 12月に策定された要領では、年間5mSvで線引きし、それを超える「線量の高い地域」では、屋根の高圧洗浄やブラシ洗浄、庭の表土の除去や上下層の入れ替えに至るまで、面的な除染を補助対象とした。それに対し、年間5mSvに満たない「線量の低い地域」の住宅では、屋根の洗浄や表土の入れ替えは対象外とし、壁や雨どいの掃除、庭木の剪定、除草、落ち葉の除去などへの補助にとどめた。ただし、学校や公園などは、線量が低い地域でも高い地域と同程度の作業を補助対象とするとしている。

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