2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年5月24日

 この定義に照らして推論すれば、中国は尖閣も南沙も「古来、中国固有の領土」と主張してきたのだから、核心的利益に当てはまる。だが、中国は米国とのやりとりの中で、この言葉が非常に強烈であり、挑発的な意味にとられかねないことを知った。これ以上、世界の中国脅威論をあおりたくはない。

 だから、みだりに「伝家の宝刀」を持ち出さないが、ちらりと刃を見せて相手国にブラフをかけることができればよいと考え、核兵器の有無を明確にしない「あいまい戦略」のように日本をけん制しようしているのではないか。

初の海洋協議の意義

 10年9月の中国漁船衝突事件で生じた日中両国の相互不信は根深く、事件後「東シナ海を平和・協力・友好の海とする」(08年5月の共同声明)との目標からは遠ざかる一方である。

 尖閣など東シナ海の危機管理について、両国関係機関が話し合う初の「海洋協議」が5月15、16の両日、中国浙江省杭州市で開かれた。全体会議のほか、複数のテーマごとに分科会を設けて協議する方針だったが、議論できたテーマは「政策と海洋法」だけにとどまった。

 日中関係悪化の表れだが、協議には日本から外務省、防衛省、海上保安庁、環境省など、中国側は外務、国防両省と国家海洋局などの担当者約50人が参加した。頻発する海洋摩擦の当事者機関が衝突の防止のために話し合いの席に着いた意義は大きい。こうした対話チャンネルを有効活用し、両国は日中友好の大局に立って、冷静な話し合いによって問題の解決を図るべきだ。

[特集] 尖閣諸島問題
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