2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2020年4月4日

 ついに3月下旬、中国やイタリアを抜いてアメリカが新型コロナウイルス感染者数でトップに立った。以来2位との差は開くばかりで、ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると4月2日現在感染者数は24万3453人となっている。アメリカでは現在、患者の3分の1以上が東部ニューヨーク州に集中しているが、数の差こそあれ全米50州に患者が存在している。

 筆者が居住するハワイ州には4月2日現在285人の感染者がいる(ハワイ州保健衛生局調べ)。ハワイで初めて新型コロナウイルス感染ケースが報告されたのは2月初旬、名古屋市出身の日本人旅行者夫婦2人だった。しかしこの2人は感染経路が知られておらず、その前にハワイ州内での感染者はいなかったため、同州内の感染者数としてはカウントされていない。日本人夫婦からの二次感染者がハワイで見られなかったことから一旦騒ぎは収まり、学校や経済も通常のまま続いていたが、その後1カ月以上を経た3月13日、トランプ大統領が国家非常事態宣言を発令すると事態は急変した。

人がまばらになったワイキキビーチ(AP/AFLO)

ハワイへもウイルス上陸

 国家非常事態宣言が出た後すぐの3月16日、ハワイ州内で初の感染者が報告された。太平洋の真ん中にあると言えど、世界中から毎日多くの観光客が訪れるハワイに無症状、あるいは軽症の感染者が渡航してくるのは時間の問題だった。3月中旬までハワイ州民の感染ケースが発見されなかったことが不思議なくらいである。

 事態を重く見たホノルルのカーク・コールドウェル市長は、クラスター発生の温床となりやすいバーやナイトクラブを閉鎖、レストラン内での飲食が禁止とする命令を出し、19日から施行された。さらに21日にはデービッド・イゲ州知事がハワイへの渡航者全員に14日間の自主隔離措置を命令。

 またコールドウェル市長は23日、必須労働者や必需品の買い出し、医療サービス受診、指定の場所でのエクササイズなどを除く「STAY AT HOME, WORK FROM HOME(自宅待機、自宅勤務)」という事実上の外出禁止令を発令。

 ハワイ州知事もすぐ追随し、3月25日から同様の外出禁止令を発令。4月30日まではハワイ州全体がロックダウン状態に置かれ、もちろん大学を含む公立・市立の学校もすべて休校中だ。ホノルル市郡政府の公表によると、ここで言う「必須労働者」とはスーパーなど食品・日用品を含む必需品を販売する店、医療、銀行、農業・漁業、ガソリンスタンド、郵便、テイクアウトやデリバリーを提供するレストラン、法律、ホテル、葬儀関係など、日常生活を送るためになくてなはらない職務に就く労働者を指す。

 ホノルル市郡政府およびハワイ州政府は、ひとたび州内に感染者が出るやいなや迅速に行動した。観光が主産業のハワイでは、もちろんロックダウンで経済が大打撃を受ける。しかし、政府は、自治体や個人が受ける経済的ダメージよりも人命を守るための決断をしたのである。被害が比較的小さいうちにウイルス感染拡大を防がないことには、後々経済への悪影響がさらに大きくなると危惧したのだろう。

バリケードを越えて侵入すると罰金または禁固刑に(筆者撮影、以下同)

観光が主産業のハワイ経済に大打撃

 多数のビジネスが臨時休業を強いられる中で、自宅勤務可能なビジネスや職種は恵まれている。新型コロナウイルス感染拡大で、観光を主産業とするハワイの様相は一変した。多数のレストランやホテルは一時休業し、これまで常に賑やかだったワイキキのメインストリートであるカラカウア・アベニューを歩く観光客もいない。一部のレストランは生き残りをかけて、許可されているテイクアウトやデリバリー、ドライブスルーなどのサービスを提供しながら営業を続けて当面をしのいでる。

 観光が主産業であるハワイでは、今回のパンデミックでレストランやホテル、ツアー業者など、観光関係のビジネスのオーナーや従業員が経済的大打撃を受けた。現在はこのような観光業界で働く人々の多くがレイオフ(一時解雇)されている状態である。

 最終的な経済的影響は今のところまだ定かではないが、地元紙ホノルル・スターアドバタイザー電子版は、今年1月まで全米最低レベルの2.7%を誇っていたハワイの失業率が今後25%まで上昇する可能性があると報道している。つまり、労働力人口のうち4人に1人が失業することになるが、多くの人々を雇用する観光業界全体がほぼシャットダウンされている今の状態では、それも当たり前と言える。渡航規制や外出禁止令が長引けば、レイオフだけではなく、閉店する店や倒産する企業も出てくるだろう。

 ハワイへの渡航自粛要請は4月16日まで続くが、事態が収束に向かっていない限り4月いっぱい、あるいはそれ以上延長される可能性は十分にある。ハワイへの渡航自体が禁止されたわけではないが、現在は観光客であっても到着後14日間の自主隔離が義務付けられており、必要な外出以外はホテルなど宿泊所に籠らなければならない。そのうえビーチパークを含むすべての市立、州立、国立公園が閉鎖、またレストランやホテルが休業している中、ハワイにわざわざ渡航してくる観光客はまずいない。

 ワイキキは今、道を歩く人もほとんどいないゴーストタウン状態だ。現在ハワイに渡航して来る人々は、外国やアメリカ本土から帰還してくるハワイ州民くらいで、観光で訪れる日本人観光客はほぼ皆無。しかしハワイに住居を持っていたり、コンドミニアムをレンタルしたりして、渡航規制前より長期滞在している日本人は当然今も一定数存在していると思われる。


新着記事

»もっと見る