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2012年6月11日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 所得税にしても同じだ。実際に欧州大陸では、北欧やドイツなどは所得税率が猛烈に高い。このため所得の多い個人が、所得税率の低いスイスなどに居住地を移す例が少なくない。

 日本が地方主権改革の中で、もし所得税を地方に移管し、税率決定を地方の自由裁量とした場合、似たようなことが起きるだろう。一人当たり県民所得が低い高知や沖縄が所得税率を引き下げ、高額所得者の誘致に成功すれば、税収は劇的に増えるに違いない。日本の国内で税制を巡る地域間競争が起きれば、工夫次第で東京への一極集中を是正する切り札になり得るのだ。

 ここ5年ほど、日本から脱出を図る企業や個人が増えている。シンガポールや香港、スイスなどへ本店所在地や居住地を移す例が相次いでいる。多くがグローバル競争に向き合っている企業や、経営者などの高額所得者だ。世界で戦う企業や個人が出て行くことが日本の大きな損失になっているのは明らかだ。地方分権の過程で法人税や所得税が地方に移管され、税率決定などの裁量権が地方に与えられるようになれば、こうした人たちを引き止める工夫が出てくるに違いない。

国民的議論が不可欠

 野田首相が言うように、年金や健康保険といった社会保障制度を全国均質のものにするのはひとつの考え方だ。おそらく多くの国民も支持するに違いない。そこに安定財源である消費税を充てるというのも政治の意思としてはあっていい。だがその場合、地方分権を進めるとなると、所得税や法人税を地方に移管することになる。だが、そうは野田首相は明言していない。つまり税制の全体像が示されていないのだ。

 同じ4月の党首討論で野田首相は、国が地域間の財源調整機能を持たなければ豊かな地方と貧しい地方の格差が広がる、という趣旨の発言もしていた。それでいくと、現状の「地方交付税交付金」の仕組みを守るということになるだろう。国が全国一律で税金の多くを徴収し、それを地方の財政状態に応じて交付金として分配するという仕組みだ。これでは地方分権は進まないし、地域ごとの税制競争も生じない。

 どの税金をどの財源として活用するのか。地方にはどう移管していくのか。支出と収入の帳尻合わせだけではなく、「税制の一体改革」に向けた国民的議論が不可欠だ。それが「国のかたち」を決めることになるのだから。

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