2024年4月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月8日

 アイケンベリーの論説は、そうした中国の意向にも迎合するような希望的観測に安易にくみすることなく、台湾防衛は引き続き重要だとする立場に立っています。その観点からすると、台湾への武器供与の度にごたついたり、いつまでも要人の交流を制限するようなことはもう止めた方が良いという議論です。常識的で健全な意見と言えるでしょう。

 また、政権交代期には中国が内向きになるだろうから、米台関係を改善するチャンスだという指摘は、新しい視点で注目されます。もっとも、現在の中国の状況は、政権交代のためというよりも、薄事件や陳事件で中国政権がボディーブローを受けたことによる影響が大きく、そのために中国は対外的に強硬に出られないように思われます。

 実際、今は尖閣問題でもウイグル問題でも、反日デモを呼びかけることは不可能でしょう。薄事件で中国共産党指導部の腐敗が表に出てしまったため、反日デモがいつ反政府デモに転じるかわからない情勢だからです。また、薄、陳の事件は台湾の体制に道義的優位を与えており、こんな時に中国は台湾に対して強くは出られません。その意味で、今が米台関係を強化するチャンスだというのは正しいでしょう。

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