2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月13日

 要するに、中国の「法律戦」は、法律の規定に照らし、どちらがよりその規定にかなって正しいか、という法律解釈の問題ではなく、相手を弱体化させ、政治的指導権を握る上でいかに利用できるか、ということに重点がある。その意味で、「法律戦」はきわめて攻勢的な政治的概念だ。

 特に日本は中国が仕掛けてくる「法律戦」に対し脆弱だ。日本の平和憲法や防衛に関する法令などは、中国が「宣伝戦」や「心理戦」も共に駆使して日本を牽制するための格好の材料となろう。有事の際、日本が米国の活動を支援しようとすれば、中国はそこにスキを見出し、「法律戦」をしかけることも考えられる、と言っています。

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 D.チェンの論評は、やや難解な部分もありますが、中国においては、法律が一般に共産党の利益に奉仕するためのものであり、また「法律戦」が軍事的意味を含む政治的活動であることを鋭く指摘しています。

 特に、最近の海洋進出に伴う中国の「法律戦」については、関係各国は、中国による国連海洋法条約などの恣意的解釈を容認しない姿勢を堅持する必要があるでしょう。米国が同条約の批准・加盟の動きを示していることは、歓迎されるべきことです。

 また、日本が中国からの「法律戦」に脆弱であるという指摘はその通りであり、そのためにも、集団的自衛権の扱いに関する法的解釈などを早急に見直す必要があります。

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