2024年4月20日(土)

Inside Russia

2012年6月21日

クセーニアの個人サイト
http://ksenia-sobchak.com/

 人気を呼んだのは、女性が羨む全ての要素を兼ね備えていたからでもあるが、父親譲りの直情的な言い回しで物怖じせず、大物に対しても歯に衣着せぬ発言を繰り返していたことも大きい。そして、それは同世代の女性たちの声や、欧米諸国の洗練されたライフスタイルに憧れる新世代の声を代弁していた。

 SNSやiPhoneを使いこなし、ツイッターでは45万以上のフォローワーがいるし、ファッション誌の表紙のようなデザインの個人ブログも毎日のように多くのアクセスがある。クセーニアは、時代の最先端を行くデジタル文化の寵児としてもてはやされ、地元メディアが行う「影響力のある女性」ランキングでも上位の常連となった。

父が築き上げた民主社会を守りたい

 その彼女が反プーチンの姿勢を示しだしたのは、前大統領のメドベージェフがプーチンにその座を譲り渡すことを明らかにした昨年9月以降だった。

 クセーニアは来る大統領選挙について、公の場でプーチンに投票するかどうか躊躇するような発言を始めた。彼女は、プーチン礼賛の官製メディアに嫌気がさし、統制を受けない情報がそのまま報じられているネットメディアに厚い信頼を置いていた。

 そして、12月の下院議員選挙で与党側の不正疑惑が発覚すると、振り子の針は一気に反プーチンに傾いていく。彼女は、「公正な選挙」を求める抗議運動の旗振り役になった。大衆に抗議デモを呼びかけるユーチューブの動画に彼女はこんなメッセージを残している。

 「私は自分の権利を守りたいの。それは、私の父、アナートリー・サプチャクが起草者の1人となったロシア憲法が提示している権利です。公正な選挙を望み、私の投票がちゃんとカウントされることも望みます。私は自由な政治制度のある国に住みたい。私の意見と、私の世代が抱く意見を考慮にいれてほしい。革命は望まない。内戦も望まない。そして、強制的な政権交代も望まない。私は自由な国に住みたい。私のことを聞き入れてくれる国に住みたい」

「自由で公正な選挙」を求めて

 クセーニアは、3月の大統領選のキャンペーンでも、自らの出演する番組や、ツイッターを使って「自由で公正な選挙」を求めた。それは、全地域に圧倒的な組織力を持ち、強大な権力機構を支持基盤に抱える皇帝へ楯突くことを意味した。

 選挙直前に行われたCNNのインタビューで、彼女は「私のパリス・ヒルトン時代は…」と言って、自由奔放なセレブのころの自分をすでに過去のものにしていることを告げた。そして、最愛の父を助けたプーチンへの尊敬と、民主主義を守り抜いた父親の遺志の狭間で揺れ動いてきた気持ちを赤裸々に語った。いつ何時も、自分の政治信条に裏切ることはなかった、というのだ。「大統領選挙で誰に投票するか」と聞かれると彼女はこう答えた。


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