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2012年6月21日

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長谷川克之 (はせがわかつゆき)

みずほ総合研究所 調査本部市場調査部長

上智大学法学部卒業後、1988年日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)入行。調査部調査役、みずほ総合研究所金融調査部主席研究員を経て現職。共著に『ソブリン・クライシス-欧州発金融危機を読む』(日本経済新聞出版社)など。

 金融政策には一般的に伝統的な金融政策と非伝統的な金融政策があると言われる。前者が金利政策であり、後者が自らのバランスシートを使って資産購入を行う量的な緩和政策だ。

 日銀は金利政策でも、バランスシート政策でも世界の中央銀行のフロントランナーと言える。ゼロ金利政策の導入は99年2月、量的緩和政策の導入は01年3月と、金融危機後に同様の政策を採用したFRBよりも9年も早い。ETF(上場投資信託)やJ−REIT(不動産投資信託)といった欧米中央銀行が未だ手をつけていないリスク性資産の買入れも行っている。

 しかし、近年、FRBは金利政策、バランスシート政策に次ぐ第3の政策を重要視している。それがコミュニケーション政策である。政策の時間軸を明確化し、予見可能性を高めることにより、金融政策の透明性と実効性を向上させようとする政策だ。金利政策はほぼ万策尽き、バランスシートの拡大も無尽蔵とは言えないなかでは、如何に国民や金融市場と円滑かつ効果的なコミュニケーションを図り、インフレ期待に働きかけるかが重要な鍵を握っている。

 このコミュニケーション政策は日本でも向上の余地は大きいだろう。日銀が発するメッセージは時としてわかりづらいことがある。「強力な金融緩和を推進する」とアクセルを踏む一方で、金融緩和の限界や副作用が強調され、ブレーキを踏んでいるかに見られることもある。

 また、決定会合後の声明文は金融政策スタンスを示す一丁目一番地である筈だが、一貫性がうかがえないこともある。市場関係者は声明文の一言一句を吟味し、前回会合からの微細な表現やニュアンスの変化から政策スタンスの変化を読み取ろうとするが、5月23日の声明文では前回まであった「強力な金融緩和の推進」という決定的な表現が削除され、一部では市場の混乱を招いた。

 インフレ目標についても日銀の姿勢はややわかりづらい。2月の日銀の決定に際して、安住財務相は「事実上のインフレ目標を導入した」と評価したが、日銀はそうした評価を肯定も、否定もしていない。政策運営の枠組みに係わることであり、海外を中心に市場の誤解を招いているのであれば尚更のこと、日銀には丁寧な説明が求められる。

求められる

独立性と自主性

 日銀や最近ではFRBも認めている通り、金融政策は万能薬ではない。日銀には徹底した金融緩和と円高抑制などできることは未だ多く、金融政策はデフレ脱却のための必要条件ではあるが、十分条件ではない。金融政策のみでデフレ脱却することは困難だ。

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