WEDGE REPORT

2012年6月21日

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長谷川克之 (はせがわかつゆき)

みずほ総合研究所 調査本部市場調査部長

上智大学法学部卒業後、1988年日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)入行。調査部調査役、みずほ総合研究所金融調査部主席研究員を経て現職。共著に『ソブリン・クライシス-欧州発金融危機を読む』(日本経済新聞出版社)など。

 馬を水辺に導くことはできるが馬に水を飲ませることは出来ない。馬に水を飲ませ、デフレから脱却するためには、金融政策によって水辺に近づけるだけでなく、政府・民間が一体となった成長戦略、規制緩和、TPPの推進、為替相場の安定、中長期的な財政健全化など政策としてのトータルパッケージによって馬に水を飲む気にさせることが不可欠である。

 そうした総合的な政策なくして、日銀法を改正して、インフレ目標を採用しただけでは、デフレからの脱却はとても覚束ないだろう。

 懸念すべきは、「決められない政治」のしわ寄せが日銀に及び、国会審議での駆け引きや政争の具として弄ばれることだ。世界のこれまでの常識ではインフレ目標の採用は中央銀行の独立性強化とセットで進められる。中央銀行の独立性を貶めかねない形での法改正は避けるべきだ。

 日銀には法律上独立性が保証されてはいるものの、その独立性に対する世界の研究者や金融市場の評価は必ずしも高くない。昨年12月に中銀法を改正し、政府が中央銀行への介入姿勢を強めたことによって、格下げや通貨・国債価格の急落に見舞われたハンガリーの事例もある。

 内外の経済・金融環境や国内での需給環境を踏まえれば国債利回りが急上昇する可能性は現時点では低いものの、日銀の独立性低下は国債相場の不安定化要因となる。日本国債の売り仕掛けのタイミングを虎視眈々と狙っている海外のファンド筋にとっては、マネタイゼーション(日銀の国債の直接引き受け)・リスクの高まりと解釈され、格好の売り材料となる可能性がある。

 そうした不幸な政治の介入を防ぐためにも、日銀が自主的にその役割を全うすることが期待されよう。

 

◆WEDGE2012年7月号より

 

 

 

 

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