医療を変える「現場の力」

2012年6月29日

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神保康子 (じんぼ・やすこ)

ライター

広告代理店勤務後独立。一般雑誌や看護師向け情報誌等のライター・カメラマンを経て国際医療福祉大学大学院医療福祉ジャーナリズム分野修士課程修了。主に医療、看護分野の取材、執筆、撮影を行う。

 あなたや大切な人が、もしも医療事故に遭ってしまったら? 事故とまでいかなくても、病院の対応などについてなんとなく釈然としなかったり、疑問に感じたりすることがあるかもしれない。そんな時、真摯に向き合ってくれる人が病院内にいてくれたなら、どんなにか心強いだろう。

 いきなり医療事故などというと、遠い世界のことのように感じられるかもしれないが、実はこれが意外と多い。「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」報告書(厚生労働科学研究 平成18年3月)によると、有害事象の発生の比率 は6.8%(入院患者)。

 特定機能病院を含む18病院を対象に行われた研究であり、この場合の有害事象とは、次のとおりである。

有害事象の定義(※)
(1)患者への意図せぬ傷害(injury)や合併症(complication)で、
(2)一時的または恒久的な障害(disability)を生じ、
(3)疾病の経過でなく、医療との因果関係(causation)が認められるもの
※)厚生労働科学研究 医療事故の全国的発生頻度に関する研究報告書
~平成17 年度 総括研究報告書(H18 年3 月) 主任研究者 堺 秀人~より

 「医療の良心を守る市民の会」(永井裕之代表)が、日本における年間退院患者数の統計をもとにおこなった試算によると、医療における有害事象での年間死亡者数は約4万人。厳密には有害事象のすべてが事故と呼ばれるわけではない。そして現在、日本における医療事故の件数を全国的に網羅したデータはないため、あくまでも目安であるが、交通事故による年間死亡者数よりも多いとなると、いつ遭遇してもおかしくないことが想像できるだろう。

 その数を減らすための努力は行われているのだろうか。

 小さな声からはじまった、あるひとつの取り組みをご紹介したい。

 医療事故で息子を失った一人の女性が、仲間たちと一緒にスタートさせた活動が今年、また新たな一歩を踏み出した。

なぜ死んでしまったの?

 「お腹が痛い」と、少し前まで泣き叫んでいた息子の理貴くんを連れて、豊田郁子さんは東京都内のある病院の夜間救急外来に駆け込んだ。2003年3月のことだ。しかし、24時間小児救急体制を敷いたその病院で、医療事故により理貴くんは不幸にも還らぬ人となってしまった。

 豊田さんは理貴くんが亡くなった直後のことをこう振り返る。「どうして息子が死ななければならなかったのか、知りたい一心でした」。しかしその時なぜか病院は、そんな家族の願いとは真逆の対応をとっていた。

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