日本を味わう!駅弁風土記

2012年7月10日

»著者プロフィール
閉じる

福岡健一 (ふくおか・けんいち)

ウェブサイト「駅弁資料館」館長

日本全国と海外の駅弁を紹介するウェブサイト「駅弁資料館」館長。2001年からこれを個人で運営、無予約非取材を原則に全国各地をめぐり、年間約400個の駅弁を食べる。「時刻表博士」でもある。

 青森という地名は、旅人に響く。陸奥と呼び替えれば、歴史の香りを帯びる。首都圏その他の本州に住み、旅の手段あるいは目的として鉄道をこよなく愛していると、その地名は駅名として、より親しみと旅情を感じる。本州の幹線鉄道の最北端であり、その名称は、日本海側であれば大阪駅まで、太平洋側であれば上野駅まで、毎日毎晩のように多くの列車に掲げられてきた。

 2010年12月4日、その青森ないし陸奥へ新幹線が伸びた。東北新幹線の八戸~新青森間が開業したことで、東北新幹線が全通したのである。かつて改札口で駅員の頭上にぶら下がったり、客車の側面に差し込まれたりしていた鉄板に描かれた「青森」の文字が、今は「新青森」と一文字増えて、新幹線の改札口やプラットホーム、そして新幹線電車の行先表示器という枠の中で、LCDやLEDの光として輝いている。

日本最北端の新幹線駅も駅弁がにぎやか

 日本最北端の新幹線駅であり、北海道や北東北の各地への列車の乗換駅となった新青森駅は、これでずいぶんと賑やかな駅となった。新幹線駅舎の新築工事が始まる前まで、駅員がおらず、鈍行しか止まらず、林と空き地を背負い薄っぺらなプラットホームが1枚横たわっていただけの駅とは思えない変貌である。新幹線の開業に向けてJRの呼び掛けにより、地元の割烹から給食業者までいくつかの会社が駅弁を出すことになり、いまは約20種類程度の駅弁が顔を出している。数度の訪問ではとても集め切れないほど、駅弁が賑やかな駅にもなった。

 従来は青森駅で販売されてきた駅弁もまた、新青森駅へ顔を出している。ここにひとつ、半世紀もの時を刻む駅弁がある。1968年に青森駅で登場したという「帆立釜めし」が、それである。その名のとおり、ホタテをメインに据えた釜飯風のお弁当である。お釜の形を模したようで、ちょっと違う気もする、赤黒く平たいプラスティック製の容器に、駅弁の名前「帆立釜めし」を四角くデザインした赤い掛紙が巻かれる。中身は茶飯の上を錦糸卵で半分、そして時にはアサリのように小さい、しかし数は賑やかなホタテの醤油煮で半分、それぞれ覆うもの。

帆立釜めし ウェルネス伯養軒 900円

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る