解体 ロシア外交

2012年6月29日

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 6月26日、国連安保理がシリア情勢に関する非公開協議を行った。協議後、ロシアのチュルキン国連大使は、国連・アラブ連盟合同特使のアナン氏が提案した、6月30日にジュネーブで開催されるシリア問題国際会議である「連絡調整グループ」会合に、ロシアのラブロフ外相が出席することを発表したのである。

 ロシアは、シリア問題国際会議の開催をずっと提案してきた。ジュネーブで活動グループ会議を開くという今回のアナン特使の提案は、ロシアの立場と一致しているとしている。ロシアがシリアに影響力を強く持っているのは事実であるが、米国との温度差やロシアがイランの参加を必要不可欠としていることなどから、ロシア主導の国際会議は難しいと考えられている。そのような中で、国連が平和的解決に関係主体を導いていくことが現在の最も期待できる展開かもしれない。

 さらに、アナン特使が、関係国に配布した、シリアの政治改革に向けた行程表の原案には、「アサド政権関係者や反体制派などで構成する『挙国一致政府』の樹立」という提案が含まれており、同案については、米ロを含む関係主要国が支持していることもあり、共通の基盤もあるともいえるのだ。

 しかし、この会議の展望も決して明るくはない。ロシアのみならず、アナン特使もイランの参加を望んだが、米国の反対で阻止されたからだ。米ロ間の溝がある中での会議の実効性に疑念の声も強くもたれている。

緊張続く中東問題

 他方、イランの問題でもロシアと米国の関係は緊張している。6月25日にはプーチン大統領が直々にイスラエルを訪問し、イランへの攻撃の自制を求めたということもあり、中東問題は多くの緊張をはらんでいる。中東問題では、ロシアと欧米の立場が概して異なっており、どこかで火を噴けば大きな混乱に発展する可能性も否めない。

 だが、ロシアが当面はアサド政権を支援し続けるという姿勢はもはや明白だ。何故なら、ロシアのムルマンスクに帰港した、攻撃ヘリコプターが積載されていると疑われていた貨物船を「船籍を変えて」再びシリアに送るということを6月21日にロシアは明言したからである。

 これまで、同船の船籍は、オランダ領アンティル諸島であった。同諸島は典型的な便宜置籍地なので、この船籍には不思議はない。だが、それが意味することは、オランダ政府の許可を得さえすれば、英国や米国が、合法的に乗船作戦を遂行できたということだ。今回、ロシアに船籍が変わったことで、外国が同船に何らかの行為をすることはできなくなった。このことはロシアの強い決意の表れにも見える。

 シリア問題の緊張は当分続きそうである。

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「しかし、ロシアにとって、シリアとの関係は決して理想的なものではないという説もある。何故なら、ロシアはシリアに武器を売却する際に、武器購入資金としてクレジットを提供しなければならなかったし、ソビエト期の数兆ドル規模のシリアの債務を帳消しにすることにも合意しなければならなかったからだ。」は、正しくは「しかし、ロシアにとって、シリアとの関係は決して理想的なものではないという説もある。何故なら、ロシアはシリアに武器を売却する際に、武器購入資金としてクレジットを提供しなければならなかったし、ソビエト期の約134億米ドルにおよぶシリアの債務のうち73%に相当する98億米ドルを帳消しにすることも合意しなければならなかったからだ。」でした。お詫びして訂正致します。該当箇所は修正済みです。(2013年2月6日10:20)

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