世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月12日

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 米国内では、国連海洋法条約の批准を巡って論争が続いています。これについて、フィナンシャル・タイムズ紙が、5月23日付で批准賛成の社説を掲載し、一方、米の防衛・戦略コンサル会社Global Strategies & Transformationの社長であるポール・ジアラが、5月28日付でディプロマット誌のウェブサイトに、「国連海洋法の愚かさ」と題する批准反対論を掲載しているので、あわせてご紹介します。

 まず、FTの社説の論旨は次の通りです。

 すなわち、米上院は、国連海洋法条約の批准に動き出した。米商工会議所も軍指導部も批准を望んでいる。ただ、批准に必要な3分の2の賛成を確保できるか、わからない。

 批准反対論は弱い。反対論者は、海洋法条約は、米の主権を侵犯し、海軍の行動の自由を制約するというが、パネッタ国防長官は海洋法批准でアラスカ入手以来の主権拡張があるとしている。また、海軍は、安全保障の強化になるとしている。

 批准賛成論は時間が経つにつれ強くなっている。北京は、南シナ海問題の多国間解決を米が主張するたびに、海洋法を批准しないで2重基準を適用していると攻撃してきたが、その根拠を奪うことが出来る。

 米は変化する世界で、自分が作った国際秩序にもっと忠誠を示すべきだ。米は、自らの国益のため、海洋法条約を批准すべきだ、と主張しています。

 一方、ジアラの論旨は次の通りです。

 すなわち、国連海洋法条約には欠陥がある。国際合意だから参加すべしとの議論に、上院は懐疑心を持つべきだ。国連海洋法条約は、排他的経済水域(EEZ)で国家の海洋への主張を拡大し、以前になかった紛争を作り出している。

 中国は、この条約の権利の厳格な執行をドクトリンとして、軍事的、政治的威嚇をしている。EEZで経済的権利のみならず安全保障上の権利も主張し、通常の軍事調査さえ排除しようとしている。これは航行の自由の死になる。中国のレトリックは最近国際的な場では穏やかになっているが、海洋での行動では自分の権利への考え方を変えていないことが明らかだ。

 中国の問題が出てきたのは最近のことであり、海洋法条約への賛成論は新しい状況のなかで見直されるべきである。今は、中国の台頭を踏まえ、海洋法条約のメリット、デメリットを議論すべき時だ。海洋法条約に加入するかどうかは義務ではなく選択の問題だ。

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