2024年4月26日(金)

ルポ・少年院の子どもたち

2012年7月12日

少年院の子どもたちにも学ぶ権利を

 キッカケは2006年12月の教育基本法の改正にある。

 教育の基本理念に「生涯学習の理念」として、「国民一人一人が(中略)、生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができる(以下省略)」という文言が加えられた。

 それを受け茨城県の水戸生涯学習センター(文部科学省の管轄)では、それまでは主に高齢者を中心としていた事業を、小学校、中学校にも広めるとともに、病院の入院患者など施設利用に恵まれない人たちのためにも積極的に活動を拡げていった。

 さらに、同センターの小沼公道氏(現水戸市立稲荷第二小学校校長/茨城県ラグビーフットボール協会普及育成委員長)は、「国民一人一人が(中略)、生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができる(以下省略)」であるならば、たとえ少年院(法務省の管轄)に収容されている子たちであっても、その権利は同じはずではないかと考えた。

教師としての責任

 以前から「収容されている少年の半数近くが、小学4、5年生レベルの学力だ」ということを関係者から聞いていた小沼氏は、自身も教師であるがゆえに特別な思いを持っていた。

 「4、5年生の時に壁にぶち当たって、どうせ俺なんか……と諦めて落ちこぼれていくというんです。『できない子』というレッテルを教師や周囲に貼られたり、自分でもそう思い込んだりしてしまった子たちだと聞きました。これは育った家庭環境だけの問題ではありません。学校教育から落ちこぼれたんではなく、落ちこぼした子たちなんです」

 「彼らは1年以内に社会に出て行く子たちです。だからその子たちにも何か一つ、少年院に入っている間に心に植えつけることはできないだろうか、学校教育の中では伝え切れなかった学習の喜びを教えてあげられないだろうかと可能性を探りました。その結果、生涯学習教育のなかに、矯正施設用の講座も入れていこうとなったのです」

省庁の壁を越えて

 しかし、異なる省庁が管轄する施設ということもあって、越えなければならない壁がいくつも立ちはだかった。しかし、小沼氏の固い決意は理解の輪を広げ、真っ直ぐな教師魂と理解者たちの協力によって一つひとつ乗り越えていった。


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