スウェーデンで生きる 海外移住だより

2012年7月17日

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伊藤清香 (いとう・さやか)

2年半の遠距離恋愛を経て、2008年冬にスウェーデンに移住した。「移民」としての生活に悪戦苦闘しながらも、新しい土地での一からの可能性に、人生を模索中。

 第一に、インテグレーションには欠かせない労働市場への参入。外国生まれの人々が出来るだけ早く言語を身に付け就職することは、最重要な焦点です。

 しかし、国営就職支援機構(Arbetsförmedlingen)の調査によると、昨年当機構に登録されていた失業者372,389人のうち34.5%、つまり3人に一人が外国生まれの人でした。長期失業者(61,073人)においては、その約半分を構成しています。政府は、彼らを雇用した企業に対して雇用税の一部を負担したり、職業訓練の機会拡大や難民対象の就職サポートを行ったりと様々な施策を練っていますが、なかなか状況は改善しません。

 この裏には、近年流入した外国人の教養のレベルも一つの重大理由として存在しています。過去数年間にヨーロッパ圏外から移り住んだ者の25%は初等学校の水準にも届かず、また15%は初等学校卒業レベル。高校卒業資格に満たない者は40%も占めているのです(Arbetsförmedlingen)。母国で十分な学習を受けることのできなかった人々は、言語や一般教養の習得にも一層時間を必要とします。彼らが滞在許可を得てから労働市場に出られるようになるまでに、平均7年(男性5年、女性9年)がかかるそうです。

治安の悪化も目立つ

 学歴の問題は失業率だけでなく、教育現場でも大きな物議を醸しています。初等学校を卒業する年齢(16歳)の外国生まれの子供たちの37%が、成績不足が原因で高校に進学することができていないのです。また、外国に背景のある子供、つまりスウェーデン語の知識が不十分な子供が生徒の大半を占める学校が増えていることも、問題の一つです。

 例えば、外国に背景のある家庭が多く住むストックホルム市内の某地区では、初等学校最終学年に通う生徒23人中21人が外国に背景のある子供でした。スウェーデン人家庭、外国に背景のある家庭に限らず、教育に熱心な親は子供のスウェーデン語習得を懸念し、学校選びにも真剣になっています。

 外国に背景のある住民が集まる地域では、治安の悪化も心配されています。ストックホルム市内を例に挙げると、外国に背景のある住民の割合が78.2%のRinkeby-Kistaと、55.8%のSpånga-Tenstaでは、社会不安に繋がる事件(放火、暴動、脅迫、盗難、ひったくり)の届出が2006年~2011年の5年間で、それぞれ+70%、+22%と劇的に増えているのです。先日公開された情報によると、Tenstaは治安の悪さがレベル6のうち4.15と全国で最低、Rinkebyも3.82と3番目の悪さでした(Tryggare Sverige)。

 外国に背景のある市民が39.8%を占めるスウェーデン南部のマルメも、以前からその治安の悪さで有名でしたが、同調査では、外国に背景のある住民が96%と60%を占める市内の二つの地域が、3.85、3.76という値で全国2番目と4番目の悪さに位置づけられています。これらの地域の治安悪化の原因としては、就職難や学校での劣等からくる不満があります。特に、経済力がなく社会との繋がりも弱い若者たちがギャングを結成し、社会や警察を相手にしているのです。

なくならない人種差別
インターネット上でも

 疑うまでもなく、人種差別もインテグレーションを阻む問題です。少々古い資料ですが、アラブ名を持つ若者の5人に一人はそれだけで就職の門戸を閉ざされている、という実態が全国紙Dagens Nyheter(2004年9月6日~9日特集)の調査で浮き彫りになりました。これは人種差別の典型例として、今でも高校の社会科教科書に掲載されています。

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