2024年4月26日(金)

ルポ・少年院の子どもたち

2012年7月20日

キーワードは「気づかせる」

 小さな積み重ねを続けて、最終的に大きな目標をクリアさせていく法務教官たちの忍耐力こそが、少年たちの心の扉を開くのである。

そのキーワードは「気づかせる」だ。

 白峯氏曰く「みんな顔が違うように非行に陥った背景はまちまちです。その子たちが成長する、変わっていく様もまったく異なります。ただ教えるとか、変えるのではなく、自分から進んで変わりたいと思った時がスイッチの入った瞬間です。今までの自分を振り返り、今のままではダメなんだ、変わりたいなと思った時を待っています。私たちは子供たちを変えられるとは思っていません。変わりたいと思わせることができれば仕事の80%は終わりだと思っています。

 24時間体制で接しているので、目つきや、表情が穏やかにかわってくるのがよくわかります」

 また、磯辺氏からは「変わらなきゃいけないと気づくのは、家族が面会に来ても『ごめんなさい』と言えなかったと思う時などです。そんなときに『今度会ったらごめんなさいと言えるか』と私が問うと『言えるように努力します』という答えが返ってきて、次の面会で家族に初めて『ごめんなさい』と素直に言えた時に変わることもあります。それに手紙ですね。意志を伝えることがなかった子が、手紙を通して気持ちを伝えるようになったりするんです。小さなキッカケをいくつも積み重ねていくうちに、自分が変わらなければいけないと思う時期が必ずやってきます」と具体的なシーンを聞いた。

 こうした変化や気づきをどの教官たちも、寄り添い、話を聞き、引き出していく。そして大人への不信感や社会への不信感を拭い自立を促すのである。

 以前、水府学院を取材した際にも、「ルールを守って規則正しい生活を送り、3食しっかり食事をすることだけでも、見違えるような落着きを見せてくれるものです。その当たり前のことが、今まで出来ていなかった子たちが多い。それは彼らだけの責任ではなく、家族や彼らが育った環境に原因があると言わざるを得ません。我々に何か特別なことができるわけではありませんが、24時間体制で忍耐強く彼らと接して、年齢に応じたあるべき姿になって社会に復帰してほしいと願っています」と黒長義広院長からお聞きしたことがある。

 まさにそれが矯正施設に携わっている方たちの祈りであり、切なる願いに違いない。

日々の教育があってこそ

 そして本稿のテーマである外部の講師による水戸生涯学習センターの「生涯学習移動講座」の意義である。(平成24年度現在、主催は水戸生涯学習センターから水府学院に移っている)


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