2024年4月25日(木)

ルポ・少年院の子どもたち

2012年7月20日

 それには、「我々は24時間体制で接し教育をしていますが、彼らに必要なのは全人格的な教育ですから、この囲われた施設の中だけで完結するものではないと思っています。我々は子供たちを社会に帰します。だからこそ、社会と繋がりを持った教育が必要だと思っていますし、取り組んでいかなければならないと思っています。逆にいうと我々の教育だけで社会に帰せると思うような、驕り高ぶった気持ちなどを持ってしまったら失敗してしまいますよ」という白峯氏の言葉が答えになるだろう。

少年たちと本気で向き合った、ラグビー講座の講師陣 (撮影:編集部)

 講座を提供する水戸生涯学習センターの寺門義典氏は「たとえばラグビー講座であれば、講師からOne for all,All for oneのラグビー精神を伝えるんですが、それは日々の教育があってこそ、そして理解があってこそ、短時間のラグビーを通して気づくのかなと思いました。講座が始まるとすぐにみんなの表情に変化が表れます。講師陣の怪我からの復帰であったり、挫折であったり、そんな話も彼らにはいいのかなと思います。それを講師たちが本気で向き合って、本気で伝えていることがいいのでしょう。その前提として日々の教育。それがあってこその短時間での気づきです。どちらも必要ということではないでしょうか」と応えた。

ライフセービング講座の意義

 前篇の最後に、私も外部講師としての立場から、――我々は2度と過ちを犯してほしくないと願う一方で、決して被害者がいることを忘れてはいない。その間で「我々にできることは何か」、「我々が伝えるべきことは何か」という答えの見つからない葛藤を繰り返している。――と書いた。

 だが、「彼らは加害者になる以前に、幼いころに虐待やネグレクトなどの経験を持っている子がいる」と聞いている。人生のスタート地点では被害者だった子が多いということだ(だからといって、虐待やネグレクトを受けたすべての人たちが犯罪を犯すわけではないが)。

 私はラグビー講座によって接した少年院や彼らのことを少しばかり記事にしてきた。葛藤の答えは見つからないながらも、昨年度、ライフセービング講座を水戸生涯学習センターと水府学院に企画し、受理された。

 講師は現役ライフセーバーの植木将人氏と北矢宗志氏という国内でも屈指の両選手と、水府学院と同じ茨城県に拠点を持つ流通経済大学ライフセービング部の12名である。


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