2024年4月20日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年7月20日

 宮城県の被害額が大きいが、これが過大な推計であることについては、前述の拙稿を参照されたい。宮城県の被害額が岩手県と同じであるとすれば、被害額の合計は2.7兆円である。農林水産業の被害額には多くの民間資産が含まれているので、公的資産の被害額は2兆円であるという私の推計は、そう間違ってはいないだろう。

つくったあとに損をする復興計画

 復興予算が巨額なものとなるのは、高台移転やエコタウンなど、あまりにコスト高の復興計画が含まれているからである。

 高台移転とは、三陸の山を削って高台を造り、そこに引っ越すという事業である。山を削るのも大工事だが、削った土を低いところに置いただけでは地盤が緩くてどうにもならない。杭を打ち、地盤を固め、上下水道、道路などを造ると、一戸3000万円の大事業となる。三陸の市街地の地価は、坪5万円程度のものである。100坪でも500万円しかかからない。そんな工事をするより、被災された方に500万円渡した方が良いのではないか。

 エコタウンとは、再生可能エネルギーという名の値段の高いエネルギーを使う街である。最初は補助金が付くだろうが、いずれは打ち切られる。住民は、国からの予算でそうしてもらっても、本当に得かどうか分からないと悩んでいるので、申請も進まず、予算も余るのだろう。

 阪神・淡路大震災でもっとも大きな被害を受けた長田地区で、新たに建てられた商業施設にテナントが入っていない。確かに、JR神戸から2駅の新長田駅のまわりの施設にはテナントが入っている。しかし、少し離れたところでは、シャッター通りどころかゴーストタウンになっている。あまりにも大きな施設を造りすぎたのだ。

 政府は、過去の震災復興の失敗から何も学んでいない。復興予算に盛られたプロジェクトそれ自体の価値を問い直すべき時だ。

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