2024年4月26日(金)

ヒットメーカーの舞台裏

2012年8月13日

 11年春に始まった開発では、まず、かつおと昆布という日本料理の2大だしをラインアップすることを決めた。しかし、和田は「これだけではお客様の想像の域を出ない」との、ひっかかりを感じていた。そこで、貝類やチキン、椎茸など、だしとなる幅広い素材を検討し、貝のなかでもふくよかな味わいがあって人気も高いあさりを選択した。

 それぞれの素材からだしを抽出するに当たっては、煮出しの温度と時間を変えながら、ベストの味を求めていった。素材によっては、高温になると、一気にえぐみが出るといった特性があるからだ。各素材とも10ほどのパターンを試してレシピを決めた。

 だしよりも難航したのが、混ぜ合わせる具材の選定だった。ミツカンのふりかけ製品では、伝統的にボリューム感のある具材を採用してきた。また、ご飯に混ぜ込んで食べるタイプは、ふりかけタイプよりも具材を大きく硬めにするのが一般的だった。その方が、ご飯になじんだ後も食感が残るからである。

 「だしむすび」は混ぜ込みが基本なので、和田は当初、従来の手法に倣って大きめの具材から試した。だが、なかなかしっくりこない。試作を重ねるうちに、肝腎のだしの味わいが「具材によって打ち消される」ことに気付いた。具材の種類や大きさ、配合する量など、ひとつのだし素材について約50通りの調合を試した。

 その結果、各だし素材とも、ごまにもうひとつだけ具材を加えるというシンプルなものにした。だしの邪魔をしないよう、具材のサイズも小さくした。

 この間、和田は開発担当の同僚と、東京や大阪のだし茶漬け専門店に通い詰め、味や具材の決定に生かした。ひとつの店で20種類ほどの商品をオーダーするので「怪しまれた」ものの、所属や目的を明かして、協力を得た。商品の仕様を最終決定する前には、約300人の社外モニターに評価してもらった。だしへの評価が総じて高く、開発陣は手ごたえを感じ取ることができた。


新着記事

»もっと見る