経済の常識 VS 政策の非常識

2012年9月3日

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 ところが、リーマンショックからの落ち込みと回復では同じタイミングで動き、回復の鈍化過程では急激に落ち込んでいた。すなわち、景気変動をむしろ拡大していた。日本自動車工業会の調べによると、新車販売の8割が補助金対象車であるという。今回の自動車販売の極端な振れを見ると、景気変動をより大きくさせる効果は、もっとひどくなるのではないだろうか。

 恣意的な補助金より、財政の自動安定化装置を使うべきだ。自動安定化装置とは、財政支出のうち、不況になると自然と支出が増え、好況になれば自然と支出が減る装置だ。不況になれば失業が増えて失業手当が増える。生活保護を受給する人も増えるだろう。

 憲法第9条を廃止せよという人はいるが、健康で文化的な最低限度の生活を保障した憲法第25条を廃止せよという人はいないようだ。

 であるなら、生活保護費の支給水準が適切で、不正受給がないなら(そう思っている訳ではない)、不況になれば仕事が減り、受給者が増えるのは悪いことではない。

 日本銀行も自動安定化装置のようになるべきだ。日本銀行は、金融政策は効果がないと自ら主張するのに熱心だ。その根拠は、需要がないのにマネーを出せないということだ。すると、需要のある時にはマネーを供給し、需要のない時にはマネーを減らすことになる。マネーの需要の活発な時は好況、ない時は不況なのだから、これでは景気が良い時にますます金融を緩和し、景気が悪い時には金融を引き締めることになる。

 1980年代の末と1990年代になってからはその通りの金融政策を行ってきた。金融政策も、不況になればマネーをより増やし、好況になればマネーの伸びを抑制するというように自動的に動かすべきだ。

 これらの政策を行えば、景気はより有効に均されるだろう。

 政府は、エコカー補助金や減税や家電エコポイントの効果を客観的に検証していない。そうであるならなおさら、景気の安定化には、恣意的な補助金よりも自動安定化装置を使うべきだ。

◆WEDGE2012年8月号より

 

 

 

 

 

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