安保激変

2012年8月14日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 今年になってすでに、韓国政府は国内での批判を受けて、日韓軍事情報保護協定の締結を一方的に2度延期している。李大統領の竹島訪問は、2010年に相次いだ北朝鮮による韓国艦船「天安」号の撃沈や延坪島砲撃、昨年末以来続く北朝鮮指導部の交代、4月のミサイル発射実験などをうけて加速してきた三カ国の安全保障協力にまたも水を差すことになった。

 そもそも、韓国側に日本との安全保障協力を促進する政治的基盤は整っていない。「天安」号の撃沈は、本来なら北朝鮮への強硬政策をとる李政権の支持につながるはずだった。しかし、その後の地方選挙では大方の予想を裏切って与党ハンナラ党が敗北した。世論調査によれば、韓国国民の6割が北朝鮮との対決よりも和解を望み、とりわけ若い世代にこの傾向が顕著であることを示している。つまり、韓国国民の多くにとって、日本との安全保障協力は北朝鮮との和解を妨げ、さらには中国との関係を悪化させる間違った方向性なのだろう。

 今後、韓国政府は65年の日韓基本条約で放棄した請求権問題を再提起し、「慰安婦」の問題を世界中で宣伝活動を行うだろう。竹島の実効支配も強化し、周辺海域で軍事演習も行う見込みである。

期待できない韓国の歩み寄り

 では、日本はこれからどうするべきか。

 『戦後日韓関係史』の著者である李庭植教授は、戦後韓国人はアジア人として日本人に接し、日本人は西洋人として韓国人に接してきたと述べている。つまり、韓国人は統治された苦しみを同じアジア人として日本人に理解してもらおうとしてきたのに対し、日本人は過去の問題を西洋人的に法律に基づいて解決しようとし、その法律家的態度が韓国人の感情をさらに逆なでしてきたのだ。この分析が正しいとすれば、日本人はよりアジア人的な、韓国人はより西洋人的な態度で互いに歩み寄ることが必要となる。

 しかし、このような歩み寄りは、現在の韓国政治の状況からは期待できない。

 そうであれば、日本は今後も日韓関係がぎくしゃくすることを覚悟し、引き続き法律に基づいた対応を続けざるを得ない。すでに検討されている竹島の領有権問題を国際司法裁判所に提訴することはその一歩となろう。けれども、国際司法裁判所への提訴は当事者双方が合意せねばならず、これまでも日本側の2度の呼びかけを韓国側は拒否しているし、今回もすでに韓国政府は呼びかけに応じない意向を明らかにしている。

関連記事

新着記事

»もっと見る