世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月28日

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 Rovner米海軍大学准教授が、7月19日付The National Interestに、「中国と核エスカレーションに至る3つの道」と題する小論を寄稿し、エアシー・バトルの概念が中国との核戦争を誘発する可能性がある、と論じています。

 すなわち、エアシー・バトル(以下ASB)は、主として中国を対象としたものであり、特に、中国本土の情報・監視・偵察に対する強力な「目潰し」攻撃をも含んでいる。

 米国の識者は、ASBにより敵国は米国との軍備競争に引き込まれ自滅する、ASBは抑止力として有効であり、更に中国が長年努力してきた作戦上の投資を無にすることができる、などと論じている。

 一方、ASBは、核攻撃エスカレーションを誘発する恐れがある。その第一の理由は、ASBにより敵の意図を読み違え、限定的攻撃に対し過剰反応する可能性があるためだ。

 第二の理由は政治的圧力であり、もし敵国の指導者が敗戦によって政治権力を失うと考えれば、敵は軍事的ギャンブルの危険を冒す可能性があるからだ。

 第三に、ASBの在来兵器による攻撃が敵の核兵器システムをも危険に晒す場合、敵は相手側が戦争の拡大を意図していると懸念する可能性があることだ。

 ASBの限定攻撃によりこれら3つの核エスカレーションが発生する恐れがある。ISRに対する「目潰し」作戦は、敵の誤解・誤算の可能性を高め、政治的に民族主義への依存を一層深めるだろうからだ。

 特に、中国本土への攻撃を行う場合、敵がASBによる限定攻撃を中国核戦力の指揮命令系統に対する「先制攻撃」と誤解する可能性がある。この場合、北京は対米核攻撃の決断を迫られるだろう。米中紛争が在来型兵器のみにより戦われるという前提のASBは、米中核戦争エスカレーションの危険性を無視している。

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